同期が急に変わったら…。
え?
『おはよう。』
朝のオフィスに
低音の落ち着いた声が響く。
いつものように、
ニコリともせず、挨拶する課長。
あ〜あ。
相変わらず、いい男ね。
背が高いのも、
憎ったらしい。
『桐谷さん。』
『なあに?』
隣の席から私の方に
身体を伸ばしている。
ニッコリ笑う俊介。
将生とは正反対だわ。
『今日、NS行きますよ。』
『うん、準備できてる。』
『さすがですね。』
『俊介、これ確認しといて。』
ファイルを手渡すと、
たっぷりの書類の束が
代わりに手渡される。
『すいません。
金曜日、桐谷さん直帰だったんで。
かなり、たまってました。』
あちゃ〜。
こりゃ、残業だわ。
頑張りますか!
『すごいね、この量。いつまで?』
『明日、午前中早めにだと
助かります。』
『了解。』
カタカタカタカタカタ
カタカタカタカタカタ。
はあ。
まだかなりあるな。
カタカタカタカタ。
カタカタカタカタ。
あ〜、お腹空いてきた。
もう昼休みなんだけど…。
『桐谷。』
この低い聞き慣れた声。
デスクに座ったまま、
私に呼び掛ける将生。
気が付けば、
オフィスには、将生と私だけ。
私もデスクに座ったまま、
返事をする。
『はい。』
『早く飯行って来い。』
『課長は、食事されないんですか?』
『ああ、後でな。』
部下に飯行けって言うなら、
自分こそ行けばいいのに。
ちゃんと食べなきゃ体壊すよ?
時々、食べてないし。
しょうがないなあ。
社食に連れ出すかな。
『課長、社食行きません?』
『なんだ?桐谷の奢りか?』
『課長の奢りですよ?』
『うちの部下は遠慮がないな。』
あんたでしょ?
遠慮がないのは。
『俺はもう少しやってから行く。
お前、早く行って来い。』
『食べれる時に食べなきゃ、
ヘロヘロになりますよ?』
『それは、お前だろ?』
こいつ〜。
プライベートネタ
持ち込みやがった。
『そうですね。
お腹が減ったら、素直に言わなきゃ
ダメらしいですよ。』
ふふん。言い返してやったよ。
『ふんっ。そういうもんか?』
『そういうもんらしいですよ。』
『じゃあ、行くか?』
よ〜し、勝った。
いつも負けてられるか。
社食の隅のテーブルで、
向かい合って昼食中。
少し遅れ気味の昼食のおかげで、
社食には、人も少なめだ。
『課長、その定食、美味しいですか?』
『ああ。』
『私もそれにすれば良かった。』
『ガキか。』
『……。』
あんたと同じ歳ですけど?
『すいません、ガキで。
私、まだ20代なんで。』
『アホか。
もうすぐ30だろーが。』
『見た目は
まだまだ20代で通りません?』
『無理だな。』
『……。』
こいつ、お世辞って言葉、
知らないの?
ムカつくから
さっさと食べちゃおう。
『桐谷。』
『はい。』
『俺、明日から出張だから。
東亜に書類届けてくれるか?』
『はい、行きますよ。』
『そうか。じゃあ、説明も頼むな。』
『任せて下さい。』
将生が留守でも、
しっかり説明してきますよ。
あの専務、サラッとかわしてやる。
『課長、戻りはいつですか?』
『木曜だな。』
ふうん。
木曜ね。
木曜か。
3日間不在ね。
ふうん。
『いずみ、寂しいのか?』
『えっ?』
ちょっと、将生〜。
名前で呼んじゃってるよ?
ここ、社食だよ?
慌てた。
思わず周りに人がいないか
見渡してみる。
それなのに、余裕顔の将生。
『誰にも聞こえてない。』
『そうだけど…。
課長、頭、調子悪いんですか?』
『生憎、すこぶる健康だ。』
『あ〜そうですか。』
ほんと、意味わかんない。
『出張って、どこに行くんですか?』
『福岡。』
『えー、いいなあ。
私も行きたいですよ。』
『仕事で行っても楽しくねぇだろ。』
『でも、いいなあ。』
『仕事抜きで、連れてってやるよ。』
『ははは。それはどうも。』
『なんだよ、その棒読み。』
『……。』
ホント、最近の将生は疲れる。
どんな仕返ししてやろうかな。
『で、俺が居なくて寂しいだろ?』
『えっ?』
このネタ、まだ続ける気?
『夜、電話しろよ?』
『何かの報告ですか?』
『報告?違うけど?』
『じゃあ、なんですか?』
『いずみの声が聞きたいから。』
『えっ?』
また出た。
だから、いったい何プレイよ。
こいつマジで一度シバく。
『電話しろよ?』
『何時にですか?』
『いつでも。まあ、寝る前かな。』
『じゃあ、遅くなりますが。』
『日付けが変わる前にしろ。』
『それは、約束できません。』
『………。』
動揺なんかしないわよ。
もう慣れてきたんだから。
こういうのは、
サラッと流すに限る。
『藤森課長。』
突然、後ろから声をかけられて
振り返る将生。
『はい。』
『あの、えっと、食事終わられたら、
少しいいですか?』
『……ああ。』
微かに眉間に皺が寄る将生。
おーおー。
この子、秘書課の美優ちゃんじゃん。
かっわいい〜!
これは、きっと告白ね。
美優ちゃんが、チラッと私を見て。
『桐谷さん、よろしいですか?』
と声をかけられた。
あら、
私なんかに断り入れなくていいのよ。
全然、よろしいですわよ。
美優ちゃん、いい子ねぇ。
私は、満面の笑みで返事をする。
『ごゆっくりどうぞ。』
『すみません。』
美優ちゃん、ほんのり赤くなってる。
こりゃ、たまんないね。
『桐谷、悪い。先に行く。』
少し将生に近づいて、
『課長〜、後で聞かせて下さいよ〜。』
小さな声でコソっと言うと、
バツの悪そうな顔をして
『やっぱり仕事してりゃ良かった。』
と呟いていった。
美優ちゃんとうまく行けば、
鬱陶しいプレイから
解放されるわね。
………。
……。
私も戻って仕事しなきゃ。
オフィスで仕事に没頭中。
カタカタカタカタ。
カタカタカタカタ。
『桐谷さん、NS行きますよ。』
『うん、行こうか。
ちょっと課長に言ってくる。』
今から、俊介と営業に出る。
時々、俊介とも営業を共にしている。
一番奥の将生のデスク。
将生の正面に立って。
『課長、宮野とNS行って来ます。』
パソコンの画面から顔を逸らさず、
チラッとだけ視線を上げる。
ニコリともせず、
『頼むぞ。』
そう言って、
すぐに視線をパソコンに戻す。
『行って来ます。』
パソコンを見ていた将生が、
ふと顔を上げて、
真っ直ぐに私の瞳を射抜く。
じっーと見ている。
なんですかー?
それやめてよー!
あんた、ムダにイイ男なのよー!
『??』
何か言いたいの?と感じて
立ち止まっていたら。
『桐谷。』
『はい。』
『お昼に言ってた件、断ったから。』
『えっ?お昼?ですか?』
『ああ。
あれ、桐谷関心があっただろ?』
『……はあ。』
なんのこっちゃ?
……。
あー!!!
秘書課の美優ちゃん!
あれの事か。
ってか、ここで言うか?
『あー、そうですか。
でも、
課長はそれで納得されてるんですか?』
『俺は関心を持たなかった。』
『そうですか。
あの、また詳しく教えて下さい。』
『……ああ。さ、行って来い。』
将生、
なんで断ったのよ?
もったいない。
私が男なら飛び付くわよ。
バカな男。
朝のオフィスに
低音の落ち着いた声が響く。
いつものように、
ニコリともせず、挨拶する課長。
あ〜あ。
相変わらず、いい男ね。
背が高いのも、
憎ったらしい。
『桐谷さん。』
『なあに?』
隣の席から私の方に
身体を伸ばしている。
ニッコリ笑う俊介。
将生とは正反対だわ。
『今日、NS行きますよ。』
『うん、準備できてる。』
『さすがですね。』
『俊介、これ確認しといて。』
ファイルを手渡すと、
たっぷりの書類の束が
代わりに手渡される。
『すいません。
金曜日、桐谷さん直帰だったんで。
かなり、たまってました。』
あちゃ〜。
こりゃ、残業だわ。
頑張りますか!
『すごいね、この量。いつまで?』
『明日、午前中早めにだと
助かります。』
『了解。』
カタカタカタカタカタ
カタカタカタカタカタ。
はあ。
まだかなりあるな。
カタカタカタカタ。
カタカタカタカタ。
あ〜、お腹空いてきた。
もう昼休みなんだけど…。
『桐谷。』
この低い聞き慣れた声。
デスクに座ったまま、
私に呼び掛ける将生。
気が付けば、
オフィスには、将生と私だけ。
私もデスクに座ったまま、
返事をする。
『はい。』
『早く飯行って来い。』
『課長は、食事されないんですか?』
『ああ、後でな。』
部下に飯行けって言うなら、
自分こそ行けばいいのに。
ちゃんと食べなきゃ体壊すよ?
時々、食べてないし。
しょうがないなあ。
社食に連れ出すかな。
『課長、社食行きません?』
『なんだ?桐谷の奢りか?』
『課長の奢りですよ?』
『うちの部下は遠慮がないな。』
あんたでしょ?
遠慮がないのは。
『俺はもう少しやってから行く。
お前、早く行って来い。』
『食べれる時に食べなきゃ、
ヘロヘロになりますよ?』
『それは、お前だろ?』
こいつ〜。
プライベートネタ
持ち込みやがった。
『そうですね。
お腹が減ったら、素直に言わなきゃ
ダメらしいですよ。』
ふふん。言い返してやったよ。
『ふんっ。そういうもんか?』
『そういうもんらしいですよ。』
『じゃあ、行くか?』
よ〜し、勝った。
いつも負けてられるか。
社食の隅のテーブルで、
向かい合って昼食中。
少し遅れ気味の昼食のおかげで、
社食には、人も少なめだ。
『課長、その定食、美味しいですか?』
『ああ。』
『私もそれにすれば良かった。』
『ガキか。』
『……。』
あんたと同じ歳ですけど?
『すいません、ガキで。
私、まだ20代なんで。』
『アホか。
もうすぐ30だろーが。』
『見た目は
まだまだ20代で通りません?』
『無理だな。』
『……。』
こいつ、お世辞って言葉、
知らないの?
ムカつくから
さっさと食べちゃおう。
『桐谷。』
『はい。』
『俺、明日から出張だから。
東亜に書類届けてくれるか?』
『はい、行きますよ。』
『そうか。じゃあ、説明も頼むな。』
『任せて下さい。』
将生が留守でも、
しっかり説明してきますよ。
あの専務、サラッとかわしてやる。
『課長、戻りはいつですか?』
『木曜だな。』
ふうん。
木曜ね。
木曜か。
3日間不在ね。
ふうん。
『いずみ、寂しいのか?』
『えっ?』
ちょっと、将生〜。
名前で呼んじゃってるよ?
ここ、社食だよ?
慌てた。
思わず周りに人がいないか
見渡してみる。
それなのに、余裕顔の将生。
『誰にも聞こえてない。』
『そうだけど…。
課長、頭、調子悪いんですか?』
『生憎、すこぶる健康だ。』
『あ〜そうですか。』
ほんと、意味わかんない。
『出張って、どこに行くんですか?』
『福岡。』
『えー、いいなあ。
私も行きたいですよ。』
『仕事で行っても楽しくねぇだろ。』
『でも、いいなあ。』
『仕事抜きで、連れてってやるよ。』
『ははは。それはどうも。』
『なんだよ、その棒読み。』
『……。』
ホント、最近の将生は疲れる。
どんな仕返ししてやろうかな。
『で、俺が居なくて寂しいだろ?』
『えっ?』
このネタ、まだ続ける気?
『夜、電話しろよ?』
『何かの報告ですか?』
『報告?違うけど?』
『じゃあ、なんですか?』
『いずみの声が聞きたいから。』
『えっ?』
また出た。
だから、いったい何プレイよ。
こいつマジで一度シバく。
『電話しろよ?』
『何時にですか?』
『いつでも。まあ、寝る前かな。』
『じゃあ、遅くなりますが。』
『日付けが変わる前にしろ。』
『それは、約束できません。』
『………。』
動揺なんかしないわよ。
もう慣れてきたんだから。
こういうのは、
サラッと流すに限る。
『藤森課長。』
突然、後ろから声をかけられて
振り返る将生。
『はい。』
『あの、えっと、食事終わられたら、
少しいいですか?』
『……ああ。』
微かに眉間に皺が寄る将生。
おーおー。
この子、秘書課の美優ちゃんじゃん。
かっわいい〜!
これは、きっと告白ね。
美優ちゃんが、チラッと私を見て。
『桐谷さん、よろしいですか?』
と声をかけられた。
あら、
私なんかに断り入れなくていいのよ。
全然、よろしいですわよ。
美優ちゃん、いい子ねぇ。
私は、満面の笑みで返事をする。
『ごゆっくりどうぞ。』
『すみません。』
美優ちゃん、ほんのり赤くなってる。
こりゃ、たまんないね。
『桐谷、悪い。先に行く。』
少し将生に近づいて、
『課長〜、後で聞かせて下さいよ〜。』
小さな声でコソっと言うと、
バツの悪そうな顔をして
『やっぱり仕事してりゃ良かった。』
と呟いていった。
美優ちゃんとうまく行けば、
鬱陶しいプレイから
解放されるわね。
………。
……。
私も戻って仕事しなきゃ。
オフィスで仕事に没頭中。
カタカタカタカタ。
カタカタカタカタ。
『桐谷さん、NS行きますよ。』
『うん、行こうか。
ちょっと課長に言ってくる。』
今から、俊介と営業に出る。
時々、俊介とも営業を共にしている。
一番奥の将生のデスク。
将生の正面に立って。
『課長、宮野とNS行って来ます。』
パソコンの画面から顔を逸らさず、
チラッとだけ視線を上げる。
ニコリともせず、
『頼むぞ。』
そう言って、
すぐに視線をパソコンに戻す。
『行って来ます。』
パソコンを見ていた将生が、
ふと顔を上げて、
真っ直ぐに私の瞳を射抜く。
じっーと見ている。
なんですかー?
それやめてよー!
あんた、ムダにイイ男なのよー!
『??』
何か言いたいの?と感じて
立ち止まっていたら。
『桐谷。』
『はい。』
『お昼に言ってた件、断ったから。』
『えっ?お昼?ですか?』
『ああ。
あれ、桐谷関心があっただろ?』
『……はあ。』
なんのこっちゃ?
……。
あー!!!
秘書課の美優ちゃん!
あれの事か。
ってか、ここで言うか?
『あー、そうですか。
でも、
課長はそれで納得されてるんですか?』
『俺は関心を持たなかった。』
『そうですか。
あの、また詳しく教えて下さい。』
『……ああ。さ、行って来い。』
将生、
なんで断ったのよ?
もったいない。
私が男なら飛び付くわよ。
バカな男。