同期が急に変わったら…。
将生が変なら、

私もかなり変になってきた。





今日は、残業にならないようにと

超集中してた。




よっぽど真剣だったのか、

俊介、話しかけてこなかったよね。

めずらしく。





でも、

その集中力のおかげで、

定時すぎには、仕事を終えた。








仕事帰り、買い出しをして、

アルコールも買い込んだ。

どうかしたら、鼻歌が出そうだった。

ヤバくない?





これじゃあ、

将生の帰りを

楽しみにしてるみたいじゃない?





ダメだって。

今までの苦労はなんだったのよ?

目指せ、平常心!!!







でもね。



きっと疲れて帰って来るだろうし、

なるべく労ってあげよう。






マンションのキッチンで、

グツグツと牛肉と玉ねぎを煮込み中。

アルコール類は冷やしてある。

グラスも冷やしてる。

ほんと、やりすぎ。





ハヤシライス。

ほとんど、出来上がり。

少しのお酒の肴と

サラダにスープもオプションで

作りましたよ。





今度、高い食事、奢らせるからね。

覚悟しといた方がいいよ。

クククっ。








ピンポーン。



玄関のインターホンが鳴る。





将生だ。

帰ってきたかな。






パタパタと、玄関に小走りした。



ガチャリ。



鍵を開けて、扉を開くと。








『ただいま。』





将生の第一声。

将生の生の声だ。






3日ぶりの将生。

マズイ……私、キュンとした。




将生、少し疲れてるかな。

いつもよりは、そんな顔だ。




それでも。




やっぱりいい男。

見た瞬間、あ〜、と思って見惚れる。




黒のスーツケースを体の横に立てて

紺の見慣れたスーツを着て

スラリと立っている。




チラッと腕時計を見る仕草。

『あんた、それ計算してんの?』

と聞きたくなる程、様になる。




ムカつくほど、かっこいい。

モテるの、分かるわ。






『おかえり。
疲れてるでしょ?』


『いや。
いずみの顔見たら、
疲れもふっ飛んだよ。』





そう言いながら、

玄関の扉が閉まってすぐに

そのまま抱きしめられた。





すっぽり将生の体に包みこまれた。




『ちょっ、将生っ!』

『わりぃ。ちょっと充電させて。』

『充電って………。』





まだ靴を履いたままの将生。

将生の匂い。

いつもの将生の香りと

タバコの匂い。






ねえ、

勘弁してよ。




胸がギュっとなる。




『………。』

『いずみ。』

『うん。』

『ごめん、もう少しな。』

『……うん。』



ギュっと

抱きしめる将生の腕に力が入って、

もっと強く抱きしめられる。





はあ、胸が熱くなってきてる。

これって、

私、大丈夫かな…。





ねえ、将生。

これって。

そーいうこと?







『はあ。
充電完了。
まだ、60%ってとこだけどな。』

『あーそう。』




うまく、返せない。

あまりに本気っぽくって、

軽口叩けなかった。




冷静になれ、私。

落ち着け、私。





将生はすんなり、

靴を脱いで部屋にツカツカとあがる。




『あー、腹減った。』

『…だよね。食べよ。』




スーツケースを部屋の隅に置いて、

タバコをポケットから取り出した。



我が家にある灰皿。

将生が以前自分で持参した

四角い黒の灰皿。




食事の前に一服しながら、

携帯を見てる。





『先にビール?』

『いいね。』



冷えたグラスにビールを注いで、

お酒の肴と一緒に

ダイニングテーブルに置いた。




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