同期が急に変わったら…。
ほっ。
将生と俊介が会議室から戻ってきた。




将生は、

デスクに戻るなり、

すぐパソコンをカタカタやっている。

休む様子もなく、

書類をペラペラめくって。






俊介は、

デスクに座る前に、

もうすでに私の方へ椅子の向きを変えて

何か話そうというのが伝わってくる。




『桐谷さん。
聞いてきました。』

『そう。』



私は、動揺を見せないように

普段通りに顔を向けた。




『大丈夫です。
課長と俺が阻止しますから!』


『ハハっ。ありがと。頼もしいわ。』


『ダメですよ。
俺、桐谷さん、頼りにしてますから。』


『そう?ハハっ。
また、今日もこき使われるの?』


『えっ?あ…いや。』




俊介〜、冗談よ。

若い子、からかっちゃったかな。

ごめんね。




『まあね、なるようになるわよ。』


『大丈夫ですよ。
俺より課長が本気でしたし。』


『あ〜そう。ありがたいわね。』




そっか。

将生、ありがとう。

こればっかりは、

私にはどうも出来ないし。






お礼も兼ねて

将生に美味しいもの作って

食べさせてあげたい。







今日は、会えるかな。

また、うちに来れないかな。

週末、ずっと一緒だったし。

無理かもしれないけど。





後から、

東亜に行く時に

聞くだけ聞いてみよう。









午後。




『桐谷。東亜行くぞ。』




今日は、東亜の契約を決める日。

大切な大きな商談。

今は、これに集中する。




将生の話術を勉強できる。

営業に残れると信じて、

しっかりと学んでこよう。





『はい。準備できてます。』

『そうか、じゃあすぐ行こう。』





今日は、

商談の後、帰社する予定。

そんな時は、社用車で営業に出掛ける。





将生の運転で、東亜に向かう。




『将生。』




真っ直ぐ前を見ている将生に

話しかけると、

チラッと助手席の私に目を向けて

優しい表情で、答えてくれる。




『ん?なんだ?』

『今日は遅くなる?』

『あー、どうかな?多分な。
マーケの仕事もあるしな。』




そうだった。

隆也に仕事、頼まれてたんだ。

もー。隆也〜。

金曜日、キツく言ってやらなきゃ。




多分、

今夜はうちに来れないだろうと

そう悟って、

少し残念に思った事は

顔に出さずに、笑っておいた。



『そっか。そうだったね。』



と返したら。




『なんだ?いずみ。
今日も一緒に過ごしたかったか?』


『えっ?べっ、別に?』


『へぇ、そうかぁ?』


『将生、ウザい。』


『クックッ、図星だろ。』


『……。』




将生め。

クスクス笑いやがって。

もう、やだ。

心を読むの、やめてほしい。






『ごめんな、いずみ。
今週はずっと遅くなるな。
金曜日のもあるしな。』




そうなのよね。

金曜日の食事会。

ちゃんと、考えてくれてるんだ。





本当に忙しい将生。

それでも、時間を作ってくれる。





胸がきゅんとした。





東亜までの道のり。




スーツで運転をする将生が

なんだかかっこ良くて

ついついチラ見してしまった。




横顔があまりにいい男で、

チラ見から、いつの間にか

ガン見になっていたらしい。




『そんなに見るな。』

『……。見てた?よね。ハハっ。』





バレてた。

いいじゃん、タダなんだし。

外の景色を見るより、

明らかに気分がいいんだもん。




『まあ、お前が見惚れてる男は、
お前のもんだけどな。』


『はいはい、
あんた、なんかムカつく。』


『ククッ。
そんなヤツに惚れてんだろーが。』





はあ、呆れて物も言えないわ。

あんたには、敵わないわね。




実際、本当にイケメンなんだから

しょうがない。

見惚れますよ、

そのルックスじゃあね。
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