同期が急に変わったら…。
『ありがとうございます。』




東亜の契約は、簡単に終わった。



将生の話は、

流れるようにスラスラと進み、

見事な営業だった。




ただただ、聞き惚れながら

将生の横で、

書類を将生の話に合わせて

めくっていくのが精一杯だった。





本当に出来る男。

私には勿体無いほどのいい男。

惚れ直した。





『藤森君、桐谷さん、お疲れ様。
これからも、よろしく頼むよ。』




東亜の専務。

今日は触らせないわよ。




『いいえ、
こちらこそよろしくお願いします。』

『よろしくお願いします。』




将生と2人で深々と頭を下げた。




頭を上げたら、

将生がさりげなく一歩前に出て、

後ろ手で私を自分の斜め後ろに

下げてくれた。





ちゃんと、守ってくれた。

ふとした優しさに感動した。

憎いヤツ。






ありがと、将生。






専務は、近づいては来てたけど、

さすがに将生の壁のおかげで、

セクハラはされずにすんだ。



ホッとした。

と思ったら。




『桐谷さん、
今日こそは飲みに行けるかね?』





専務〜。

そっちで攻めてきやがった。





『専務。ありがとうございます。
ですが。
桐谷はまだ仕事を抱えておりまして。
今日は、
これで失礼させていただきます。』



将生が、キッパリと断ってくれる。

ほんとに頼もしい。

またまた感動した。




『そうか…。
桐谷さんは忙しいな。
次こそ、付き合ってくれよ。』

『はい。申し訳ありません。
今日は、ありがとうございました。』




無事にノンセクハラで

東亜を後にする。





すごい。

なにもされずに帰ってくるのは

いままでなかった。






今日、何度目だろう。

将生、ありがとう。





会社までの帰り道。

社用車の中。




『お疲れさん。』

『将生、あんたやっぱりさすがだよ。』

『何が?』

『何においても。』

『そうか?惚れ直しただろ?』

『……。』




確かに惚れ直したけど、

それを将生から言われたら

素直にそうだとは言えない私。





何も言わずに窓の外に目をやって

知らん顔をしてみる。






将生は何も言わずに

私の頭を撫でてから、

そっとまた手を握ってくれた。





ほんと、私のポイントを掴んでる。




だって、

胸がキュンとなるんだから。





トキメキポイントを

正確についてくる。





将生って、

こんなに甘いヤツだったんだ。





どんどん好きの気持ちが

増殖してしまう。

とどまる事を知らない。


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