同期が急に変わったら…。
『いずみ。
企画の異動は、延期だ。』

『えっ?ほんと?』

『ほんと。』

『やった!良かったー。』





あまりに安心して、

将生にガッツリ抱きついてしまった。





なかなか恥ずかしい事をしたと、

瞬時に気が付いたけど

時既に遅し。



『お前、やけに積極的だな。』

『なっ、なによ。
だって。…ごめん。つい。』

『いや、大歓迎だけど?』




将生は、

ハハっと笑って

抱きつく私の背中を優しく撫でて、

頬に軽いキスを落とす。





『良かったな。』






抱き合っているせいで、

将生の低くて優しい声が

耳の近くで聞こえてくる。





『うん。』

『でも、延期だからな。』





ん?

どういう事?





将生の顔が見たくて、

抱きついていた腕を離そうとしたら、

将生の腕がぎゅうぎゅうと巻きついて

全く離れてくれない。







『ねえ、延期って、どういう事?』


『まあ、1年間は営業にいろ。』


『1年間?』


『ああ。一年あれば、…まあな。』


『何?』


『まあいいだろ?
その後は、俺に任せとけ。』


『…うん。』







なんだか納得いかないような気がする

…けど、

将生に任せておけば大丈夫だと

そう思えてくる。




だから、

それ以上は何も聞かなかった。







でも、やっぱり目をみて、

ありがとうを言いたくなって。




もう一度将生の身体から

離れようと試みたけど、

どうやっても離してもらえなかった。







まあ、とにかく営業に残れる。

嬉しい。

本当に良かった。

はー、安心した。





まだまだ、

将生のそばで仕事したかったんだよね。



営業、まだやりたかったんだよね。





将生が頼もしくて、ありがたくて。

どんどん将生への思いも溢れてくる。






この際、

このまま将生に抱きついていよう

と思って、

将生の首に回している私の腕に

ぎゅうっと力を込めて

そっと首筋にキスしたら、




『いずみ、煽るな。
お前、ここで襲うぞ。ったく。』


『………。』






あー。

いやいや……。

すみません。

………。






『ねえ、そろそろ離れようか?』






座ったまま抱き合ってると、

体が変な状態で

ややキツくなってきた。

ムードのない事、言えないけど。






『だな。このままいたいけどな。』






将生は、

諦めたように腕を離したかと思えば

チュッと唇に軽いキスをして、






『はー、マジで、おかしくなる。
オフィスに戻るぞ。』


『うん。
将生、ありがとう。』


『どういたしまして。』




と、優しく笑った。



やっと、目を見てお礼が言えた。




将生、本当にありがとう。





『あっ、ねえ将生。
たまには俊介と瑠美ちゃん
一緒に営業行かせてみたら?』




異動がなくなったら、

急に余裕が出てきた。

あの2人に、

ちょっとだけ、お節介しちゃおう。




『宮野と加藤か。
そうだな、考えとくよ。』

『うん、お願いね。』




ふふふっ。

気分よく、オフィスに戻る。
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