同期が急に変わったら…。
へっ。
オフィスに戻ると

俊介がニヤニヤしていた。





何、ニヤニヤしてんのよ?

私があんたに

ニヤニヤしたい気分なのよ?





デスクに座り、

痛い視線に我慢出来ずに



『なによ?』



と、少しキツめに話してみる。



『いえ。良かったですね。』



と、ニコニコの俊介。


なによ〜。




『もしかして、聞いたの?』

『聞いたと言うか、知ってました。』

『なんで?』

『課長と俺が頑張りましたから。』




そっか、

俊介も力になってくれたんだ。




『そうなの?ごめん、ありがとう。』


『いえいえ。
俺より課長が必死でしたよ。』


『えっ?』





と、更にニヤつく俊介。

あらら?

何か、気が付いたかな?





『まー、俺は口は堅いですから。』





俊介〜、なんか意味深なんだけど。

やっぱり気付いてる?

マズイな〜。





『とにかく、ありがとう。
これからもよろしくね。』


『はい。よろしくお願いします。』






と、俊介が手を差し出してきた。

見れば、書類は持ってない。



ん?

ん?




『あれ?よろしくの握手ですよ?
今日はしないんですか?』


『アハハハっ。
そうね、そんなのあったわね。』


『ですよ。はい。』




ぐいっと、更に手を伸ばしてくる俊介。




『はい、よろしくね。』

『はいっ。』




今日は、がっしりと手を握って

ニコっと笑う俊介。





『宮野〜。』




俊介を呼ぶ声に振り返ると、

将生と目が合った。





俊介を呼んでいるのに、

私を鋭い目で見ている気がするのは、

私だけ?





『ほらね。
課長、チェックしてるでしょ?』





俊介は、クスリと笑うと、

パッと手を離して

スタスタと課長のデスクに向かった。







チェック?

もしかして、将生のチェック?

私、見られてる?





『お前、この報告書、なんだ?
こんなんで、済まそうと思うな。
やり直してこい。』




将生の語気は強く、

若干のイライラが見え隠れしてる。





まさか、だよね?

握手、のせいじゃないよね?





思い直して、

パソコンに向かうが、

やっぱり気になって、

将生の方に視線を流すと、




………。




パソコンの画面越しに、

ガン見されてる。

しかも、眉間に皺を寄せまくって。






怖いんですけどー。






慌てて、視線を逸らして

パソコンの画面に目を向ける。





なんなのよ。

握手だ、多分、握手だ。




将生って、

独占欲強い?

ビミョーに嬉しいかも。

なんちゃって。





『桐谷。』





勝手に浮かれていたら、

低〜い声の将生によばれた。

あちゃ〜。




『はい。』




将生のデスクまで行って

真ん前に立って

背筋をのばした。






『これ、見ておけ。
来週、アポをとって行ってこい。』





と、メモ用紙にサラサラと

何かを書いている。





『ここに連絡をしてみろ。』





と、ファイルとメモ用紙を渡された。





メモ用紙をパッと見たら、




〜手、握らせんな。〜






短い文章。





あらら〜。

妬いてたの〜、まさか?

まさかでしょ〜?






思わず将生を見たら、

私を見ずに

もうパソコンをカタカタやっていた。






このメモ用紙の短い文章に

妬いてた将生の気持ちが見えて、

ぽっと暖かくなった。





そっと、折りたたんで、

私のシステム手帳に挟んだ。





俊介〜、やってくれたな。

侮れないわ。



まあ、助けてもらったし、

許してやるか。
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