俺がイイんだろ?
カチャ
「やっぱり素敵な部屋!」
自分で決めたアパートに入って第一声。
すごく雰囲気も気に入って借りた。
なんと家賃も格安!
その理由は、誰か知らない人とシェアするから。
私は別に気にならないし、女性にしてくださいって頼んでオッケーもらったから何も心配はいらない。
「どんな人だろうなぁ♪」
どんな人か気になる。
新たな出会いを楽しみにしていた。
「そういえばいつ来るのかなぁ」
リビングにあるソファーに座って1人で考えてみた。
明るい子かな?
それとも人見知りの子?
あ、いや…
人見知りの子がわざわざシェアする物件なんて選ばないよね…
だとしたらやっぱり明るい子?
どっちにしろ楽しみ!
ピリリリ
「ん?」
妄想に妄想を重ねていたら、携帯の着信音が鳴った。
相手は美嘉。
「美嘉!?」
『ひかりー!
元気?』
「もちろん!
ゴメンね、勝手に1人で上京しちゃって…」
『そんなことはどうでもいい!』
どうでもいいんだ…
『アンタ、いいアパート見つけた?』
「うん!
すごくいいところなの!」
『うん、知ってるよ』
へ?
知ってるってどういうこと?
『実はね?
アンタのよぉーく知ってる人がそこの住人になるワケよ』
「知ってる人?
誰!?」
『それは…』
美嘉が喋ろうとした時、キィっと音をたてて扉が開いた。
「…!?」
入ってきた人の姿を見て言葉を失った。
『アンタのその様子なら、今着いたんだ』
「美嘉…どういうこと、なの…」
『ん?
どういうことだろうね?』
そう…私の目の前にいるのは…
『仲良くやれよ』
プツッ
美嘉が電話を切った音が耳に残る。
「京平…さん」
「よぉひかりちゃん…久しぶりだな」
ずっと会いたかった人を目の前に、私は自然と涙がぼろぼろこぼれた。
「おっおいっ、ひかりちゃん!?」
「うっ…きょう、へいさん…!」
その瞬間わかった。
きっと美嘉と天馬さんとコウは全部わかってた。
私の京平さんへの思いも、京平さんが東京にいることも…
みんなの思いがすごく嬉しくて嬉しくて…涙が止まらない。
「泣くなひかりちゃん。
な?」
「京平さん…」
京平さんは私の流れた涙を手で拭った。
久しぶりの体温。
すごく心地良くてたまらなくて…
やっぱり京平さんが好きだって思った。
二年間ずっと変わらない思い…
京平さんを思い続けて良かったって思えた。
「会いたかった…ひかりちゃん」
「京平さ…」
京平さんは強く強く私を抱きしめた。
苦しいくらいに。
「京平さん…痛いですよ…」
「あっ、わりぃ!」
力は緩んでも、京平さんは身体を離そうとしない。
私も腕を京平さんの背中に回した。
「ひかりちゃん…いや、ひかり」
「京平さん!?」
「さんはいらねぇよ…
京平って呼んでくれ」
抱きしめられているだけでもドキドキが止まらないのに、呼び捨てで呼ばれてさらにドキドキした。
「京平…」
「身勝手なことしてゴメンな…
全部話すよ」
「はい…」
京平はそっと身体を離して、私のおでこにちゅっと軽くキスをした。
赤面する私を見て笑う京平。
恥ずかしくてうつむいてしまった。
京平…会いたかったよ…