俺がイイんだろ?

-京平side-


二年前、俺はすでに東京に行くことを決めていた。
その時に知っていたのはてんだけ。


「なぁきょう…ほんとにひかりちゃんに何も言わないのか?」

「言わねぇよ。
付き合ってるわけでもねんだから」


つい強がって酷いことを言ってしまった。
付き合ってないのは事実だが…
ひかりちゃんを好きな気持ちは誰にも負けない自信があった。


「まったくお前は…
かわいくねぇやつ」

「うっせ」


てんは俺のことはすぐわかるから困る…

ちょっと笑っているてんを睨む俺。
そんな俺を見てさらに笑うてん。

てんにはかなわねぇよ…


「なぁきょう…
なんでひかりちゃんと付き合わねんだ?」

「は?」


思いもよらないことを聞かれて、唖然とする俺。


「俺だけが思ってることじゃない。
美嘉も幸之心も思ってる。
もう付き合ってるようにしか見えないのに、事実は付き合ってない…」


まぁ確かにそうだが…


「お前のことだから、何か理由があるんだろ?」

「…フッ」


さすがてんだよ。
ほんとなんでもお見通しだな。


「俺、ひかりちゃんと会う前から上京決めてたろ?」

「あぁ…」

「付き合ってねぇけど…心配かけたくないし、寂しそうな顔見たくねんだよ」

「……」


てんが俺の顔をジッと見ながら黙る。


「てん…?」

「はぁ…お前よ。
言わないで行くってのも、ひかりちゃんが傷つくことに変わりはねぇよ」

「……」


知っていた。
そんなことわかりきってる。

俺は…


「…俺ってよ、ずりぃんだ」

「?」

「ひかりちゃんの寂しそうな顔見ちまったら、きっと東京に行けなくなる…
夢だったプロの話もなくなっちまう」

「……」


ただ黙って話を聞くてん。


「だからひかりちゃんから逃げてんだよ俺は…」

「きょう…」


俺ってバカだよなほんと。
何がいいことで、何が悪いことなのかわかんねぇよ…

「お前は相変わらず不器用だよな、そういうとこ。
まぁ、俺は嫌いじゃない」

「てん…」

「ひかりちゃんを思ってるのはすごく伝わる。
お前の気持ちだ、それでいいと思うぞ」


てんの言葉には俺と違って説得力がある。
ひしひしとてんの思いが伝わってきた。


「サンキュー、てん…」

「なんで礼なんか言うんだよ。
お前らしくねぇ」

「そうだな…」


弱く笑う俺の肩にポンとてんは手を置いた。


「なぁきょう。
1つ提案があるんだ」

「なんだよ?」

「あのな…」









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