俺がイイんだろ?


「っていうことだから、京平早く帰って」

「はぁ!?」


美嘉は京平を強引に引っ張った。


「ちょっと待て!
俺だってひかりと久しぶりに会ったんだぞ!」

「そんなの知らねぇよ。
さ、行った行った」

「おっおい!美嘉!」


バンッ


美嘉はおもいっきりドアを閉めて、京平を追い出してしまった。

あ、そういえば連絡先聞くの忘れてた…
ま、今度でも大丈夫だよね!


「ひかりー
コーヒーちょうだい!」

「あっ、今コーヒーきれてるんだよね…」

「そうなの?
なら買い物でもしに行くか!」


買い物…!

私の顔はパァッと明るくなった。
初めての東京で親友と買い物が出来る楽しさと喜びが胸いっぱいに広がった。


「うん!行こ!」


美嘉は優しく笑って、私の頭をクシャクシャと撫でてくれた。
そんな仕草も久しぶりのように感じて、胸がまたいっぱいになる。

これからいいことが起きるといいな…!













――


「ひかりー
食器これでいい?」

「さすが美嘉!センスあるね!」

「あったり前よ!
なんてったって、未来の大スター美嘉様だからな!」

「もう、美嘉ったら!」


二人で笑い合いながら冗談を言う。
久しぶりに私に笑顔が戻ってきた気がした。


「よし、次の店行くか!」

「うん!」


雑貨屋を出て、人波でまみれた道を二人で歩く。


「あ…そういえば」

「ん?
どうかした?」


私の目の前にすごく素敵なCDショップがあった。


「美嘉!
ちょっとそこのCDショップ入っていい?」

「はっ!?
だ、ダメ!」

「えっ!?」


な、なんでダメなの!?


「こ、今度にしなって!
急ぎでもないんだろ!」

「いや、私の好きなバンドのCDが今日発売だから買いたかったの!」


そう言うと、美嘉はちょっと複雑そうな顔をして黙った。


「アンタの好きなバンドって…」

「うん!Lily&crow!
ボーカルのリリィーの歌声最高!」

「あ、あぁ…まぁな」


美嘉の思いは何も知らず、私はただ大好きなバンドを語る。


「だってさ?
リリクロってこんなに人気なのに一回も顔出したことないじゃない?
ライブでも!」

「確かにね…」

「今回出したCDやっと顔だししたんだって!
私ドラムのryuのしゃべる声とか雰囲気がすごく好きなの!」

「!!」


美嘉はすごく驚いた顔をしていた。


「だから美嘉ちょっと待ってて!
私買ってくる!」

「ひ、ひかり!
待ってって!」


美嘉の言葉を聞かないまま、私は走ってCDショップに入った。







< 13 / 33 >

この作品をシェア

pagetop