俺がイイんだろ?
「ひかり!
待てって!」
「どうしたの?美嘉」
強く腕を掴まれた。
明らかに美嘉の様子がおかしい。
だけど私はもうCDショップの中だからもう帰る気はなくて…
きっとそれを美嘉も知っているはずだ。
「今日発売されたばっかりだから、きっと大く売ってるはず!」
そして数歩歩いた時、目の前に大きくLily&crowの文字。
「見っけ!」
私はテンション高く駆け寄った。
「……」
美嘉は黙って私についてきた。
腕は掴んだまま。
「Lily&crow……」
美嘉が遠くを見るような目で呟いた。
その視線の先には…
「う…そ…」
衝撃的な光景があった。
私と美嘉は開いた口が塞がらない状態。
「美嘉…」
「アタシの予想…当たってたよ」
美嘉が指を指したのは、Lily&crowのポスター。
そのポスターには綺麗な女性と三人のイケメン。
その中に…京平がいた。
「なんで京平が…」
今起きている現状を信じるには時間がかかった。
ポスターの中でクールな表情をしながらタバコをくわえる京平。
その京平の肩に手をのせて艶やかな表情をしているリリィー。
リリィーは私が思っていた以上に綺麗だったけど、少し嫉妬してしまった。
「まさかこんな形で知ることになるとはね…」
ほんとにそうだよ…
東京に来て、京平と久しぶりに会って…
二年前のことをたくさん聞いたけど、全然足りない。
まだまだ京平には隠していることがあった。
京平がLily&crowのメンバーだということ、タバコを吸っていること…
全部インパクトがありすぎて頭がついていかない。
「アタシね…」
頭が真っ白になっていた時、美嘉が真剣な表情で語り始めた。
「アンタとCDショップに行って初めてリリクロの曲聞いた時、京平が作った曲じゃないかって思ったんだ」
確かに…
あの曲調は似てる。
でも派手なロックな曲ばかり作っていた京平とはまったく違うバラード系。
だから全然気づかなかった。
「アンタが私達のバンドのボーカルに誘われた時さ、断ったじゃん?」
「うん…
マネージャーでいいって言ったね…」
「懐かしいね…
でもひかり、内心ボーカルになってみたかったんじゃない?」
「っ…」
美嘉は変なところで鋭い。
確かに美嘉の言う通り、私はあの日京平にボーカルにならないか?と誘われた時から、ずっとなってみたかった。
私の上京してからの夢、それは…
「リリィーを越えるようなボーカルになって美嘉と同じくプロになりたい。
だから上京したんだ」
「ひかり…」
初めてほんとの私の夢を伝えた。
「アンタさ、ほんとアタシと気ぃ合いすぎ!」
「わわっ」
美嘉は笑いながら私の肩に腕をまわす。
「さすが親友!
実はさ、アタシもひかりと同じくリリィーを越える目標があんの!
ソロだけどな!」
「そうなの!?」
美嘉の夢もちゃんと聞くのは初めて。
まさか私と同じだったなんて…!
なんだか嬉しくなった。
「初めてリリクロの曲聞いた時から越えてやろうって思ってた。
今は京平がいるって知って、さらに越えたいっつー気持ちになったよ!」
「うん…私も!」