俺がイイんだろ?
-京平side-
「「乾杯!」」
俺は今、新しいシングルを出した記念の打ち上げに来ている。
正直あんまり乗り気ではなかったし、ひかりのことが頭から離れなかった。
ひかり…二年前より大人っぽくなってて綺麗だったな…
やっぱり俺には…
「きょーへー!」
「うわっ!」
1人でしんみりと考えていた時、後ろからリリィー…いや、梨華に抱きつかれた。
「何してんだよ梨華!」
リリィーっていうのは本名じゃない。
本名は梨華。
梨華のりをとって、外国人のような名前にしている。
見た目もすごくハーフっぽい。
世間的にはハーフじゃないかと噂されているくらいだ。
「一緒に飲もうよー!」
「なんか酒臭ぇぞ梨華…」
「なにがぁ?」
完璧酔ってるこいつ…
梨華は俺より3つ上。
世間からは大人しくて女性らしいと思われているらしいが、実際は…
「きょーへー!
お酒!お酒!」
少しオッサン的なとこがあって全然女らしくない。
大人しくもない。
だけど、歌う時の表情とか歌い方が俺は気に入っている。
「あぁうっせぇ!
龍!なんとかしろ!」
「へいへい」
リリクロのドラム、龍の本名は龍汰。
俺より5つ上だ。
しっかり者で、リリクロのリーダーでもある。
「ほら行くぞ歌姫」
「えー!
きょーへーと飲みたいー!」
「はぁ…」
これだから打ち上げ来たくねんだよ…
でも迷惑なわけではなく、楽しいといえば楽しい。
…楽しいんだけど、もう1人問題児がいる…
「うわぁぁああああん!
京平さぁぁぁあん!」
「今度はなんだよ…帝」
リリクロのベース、帝。
帝っていうのは本名じゃない。
本名はいくら聞いても誰にも名乗らない。
すごく不思議な奴で、時々見せる眉間にシワをよせた表情は気になっていた。
だけどひかりと同じ18歳。
ひかりとは違ってすごく手がかかる子供だ。
「マネージャーひっでぇの!
聞いてよ京平さん!」
「あぁもう…
なんでいつも俺なんだよ」
「京平さんしかいないんだって!
梨華さんはすぐ酔っぱらっちゃうし、龍汰さんは仕事で忙しいし…」
「俺だって忙しいだろボケ!」
ポカッと帝の頭を叩く。
帝からはいてっ!とかわいい反応が返ってきた。
普通にしてりゃあかわいい好青年って感じなのによ…
「はぁ…」
「…?」
帝がいきなり落ち込んだ表情でため息をついた。
「おっ、おいどうした!?
悪かった!俺が悪かったって!」
「京平さん、何謝ってるんですか?」
「はっ?」
疲れたように笑う帝。
あ、俺のせいじゃねぇのか…
だとしたら、どうしたっていうんだ…?
「お前…何か悩み事あんのか?」
「うん…実はね」
夜景を見つめながら語り出す帝。
二年弱くらい一緒にいたけど、こんな表情を見るのは初めてだ。
「ボクさ…」
「おう…」
帝は突然言葉を詰まらせた。
なんか様子が変だな…
「…最近エッチしてないんだよー!」
「……は?」
帝が何を言っているのか一瞬理解できなかった。
「いいお姉さんが見つからなくてさー
困ってるんだよねー」
「おい帝…
それほんとにお前が言いたかったことなのか?」
帝は遊び人なのは昔からだし、こんな話題が出るのもいつものことだ。
きっとこんなくだらないことじゃない。
「ヤだなー京平さん!
ボクにこれ以外の悩みなんてあると思ってるの?」
「……」
帝は笑ってる。
だけど、無理しているようにしか見えなかった。
でも追求しないほうがいいのか…
そう思って俺は聞かなかった。