俺がイイんだろ?


『お前とバンド一緒に組んでたら張り合いねぇだろ?』

「どういう意味だ…?」

『俺もプロになる』

「はぁ!?」


俺はつい立ち上がった。

ぷ、プロになるって…
あの音楽を趣味でやりたいっつってたてんが…!


『そんなに驚くことか?』

「驚くに決まってんだろ!
なんでいきなりそう思ったんだよ!?」

『まぁ落ち着けきょう』

「あ…」


そういや声が大きくなってた…

俺は深呼吸して、イスに座り直した。


「それで?」

『ひかりちゃんが上京する時、ひかりちゃんの表情を見て…決意が固まったんだ』

「ひかりの表情?」

『あぁ…
決意が固まった目だった。
その目を見て俺も決心した。
ひかりちゃんと幸之心と一緒にプロになって売れてやる…ってな』

「てん…」


素直に嬉しい気持ちと、てんに嫉妬している気持ちが交じる。

てんは俺がいない間のひかりを知ってる…
多分、俺以上に。


『だからそのうち俺もそっちに行くんだ。
幸之心と一緒にな』

「コウも乗り気なのか?」

『あいつには音楽しかない。
いや…音楽じゃなきゃダメなんだよ。
だからすげぇ乗り気だよ』


コウらしいな…

懐かしい二年前の記憶を思い出す。

そういや俺…梨華のことも、龍のことも、帝のことも…
全部ひかりと美嘉、てん、コウと重ねて見てた。


「なぁてん」

『なんだ?』

「俺、もちろん今のバンドがすげぇ好きだ。
毎日充実してる」


だけど…


「てんやコウ、美嘉にひかり…
いつもお前らを思い出す」

『……』

「最近いつも…またてん達とバンド組みてぇって思う」

『きょう…』


俺は初めっから…


「ひかりとてんとコウと美嘉がいるバンドで、プロになりてぇと思ってた」

『…そうだったのか』


二年の月日が過ぎた。
でも変わらない思い。


『お前の気持ちはわかった。
でも今のバンドはどうすんだ?』

「あ…」


全然考えていなかった。
ふと梨華達に視線をやると、楽しそうにライブの予定の話をしていた。


『そう簡単に抜けらんねぇだろ』

「…まぁな」


Lily&crowだって、大切な俺のバンドだ。
二年も今まで頑張ってきたバンドなんだ。


『だから、俺達とライバルになってみるってのも…いいと思うぞ』

「…そうなのかもな」


夜空に輝いている星を見る。

そうだ…
一緒にバンドやるだけがすべてじゃねぇんだ。
ひかりが好きだ。
でもライバルになる。
複雑だが、それもまた運命だ。


「てん…這い上がって来いよ、絶対」

『何上から目線で言ってんだ。
当たり前だろ』

「はは!」


俺が前へ進む理由と…目標がはっきり見えた気がした。






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