俺がイイんだろ?

BHP。


-ひかりside-


「ひかり!」

「あれ?
どうしたの?美嘉」


京平さんと会わなくなって半年。
もうこんなに月日が経っていた。
そしてある日の朝、美嘉はすごくロックな格好で部屋から出てきた。


「聞いてよひかり!
アタシ、プロデビューできるかも!」

「えぇ!?」


朝からとんでもないことをカミングアウトする美嘉。


「今日プロデューサーと話しに行くんだよ!
あぁワクワクする!」

「そう…なんだ」


私が知らない間にどんどん大きくなっていく美嘉。
デビューできるかもという話なんて、一回も聞いたことなかった。
そんな素振りもまったくなくて、すっかり安心しきっていたけど…
美嘉は私と違って、確実に夢へ向かっていた。


「それじゃあ行ってくる!」

「いってらっしゃいっ」


美嘉はキラキラした笑顔で出て行った。


「……」


1人取り残される私。
不安と焦りが交ざって気持ち悪い。
京平さんと離れてから、私の時間は止まったかのようだった。
バイトして買い物して…
それを気づけば半年も続けていた私。


「私…なんのために東京にいるの…
私の存在する理由って何…?」


自然と涙が溢れる。


「……っ!」


咄嗟にアパートを飛び出した。
行く当てなんてない。
だけどひたすら走った。


「はぁ…はぁ…」


そしてたどり着いたところには…


『今回リリースされた“永遠に”はどう作曲されたんですか?』

『リリィーの歌声を最大限に活かせるようにしたつもりです』


大きいスクリーンに映るリリクロ。
ちょうど私は京平がインタビューされているところを見てしまった。


『リリィーさん!
今回のシングルの聞き所は!?』

『えっと、サビ前の…』


透き通るリリィーの声。
その真っ直ぐな声は、今の私にはすごく痛い。


「私なんかに…リリクロを越えられるわけないよ…」


そしてまた走り出した。
京平と離れて、京平がリリクロのギターだと知ってから…私はリリクロのCDを買わなくなった。
あれだけ行っていたライブも行かなくなって、ファンクラブもやめた。


「はぁ…はぁ…」


私はどこに行けばいいの…
どうすればいいの…?


「私…生きてていいの?」


涙がぼろぼろと溢れ出す。
私の心は限界で、足も前へ進まなくなった。
そしてその場に座り込んだ。
幸いあまり人が通らない道だった。


「誰か…誰か…!」






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