俺がイイんだろ?


そう思っていた時だった。


「ひかりっ!」

「っ!?」


後ろから名前を呼ばれてパッと振り返ると、視界が真っ暗になった。
一瞬京平かと思った。
だけど違う…
この匂いは…とても懐かしい匂い。


「コウ…?」

「そうだよ…」


コウに強く抱き締められる。
すごく安心した。


「探したよ…」

「なんでコウがここに…?」

「…天馬さんが東京行くって前に言ったでしょ?」


懐かしい記憶を思い出す。
そういえば天馬さんはそう言っていた。


「天馬さんも美嘉さんも…何よりひかりがいるのに、僕が東京来ないわけないじゃん…」

「コウ…」


コウの気持ちがすごく嬉しくて、抱き締め返した。
それに少し驚いたみたいで、コウは照れたように笑った。


「ははっ、ひかりが抱き締め返してくれるの初めてだ」


確かにそうかも…

急に恥ずかしくなって身体を離した。


「えー!なんで離れちゃうの!
もっとギュッてしてたい!」

「こ、コウ!
冗談やめてっ」

「…冗談じゃないよ」

「へ…?」


いきなり真剣な顔になるコウ。
久しぶりに見たコウの顔は、確実にカッコよくなっていて…かわいさが少なくなっていた。
なんだかドキドキしてしまう。


「僕…ひかりが好きだよ」

「えっ…!?」

「大好きだよ」


突然の告白。
心臓の音がコウに聞こえそうなくらいバクバク鳴る。

わ、私だってコウが好きだけど…
コウの好きとは違うと思うし…!
それに私なんだかんだ京平が好きだし…


「あ、あのっコウ…私…」

「…っあはははは!」

「へ…」


いきなりお腹を抱えて笑い出すコウ。

ど、どういうこと…?


「ゴメンひかり!
冗談だよ!」

「冗談…?」

「そうそう!
ひかりのことは確かに大好きだけど、姉貴みたいな存在としてね!」

「あ……あぁ!
そ、そういうことね!」


なんだ…
つい勘違いしちゃった…

私もコウにつられて笑った。


「あ、やっと笑ったねっひかり」

「え?」


あ…そういえば自然と笑ってる…


「ひかりに泣いた顔なんて似合わない!
誰が泣かせてるかは知ってるけど、僕はひかりに笑ってて欲しいんだ」

「コウ…」


なんでコウが知ってるのかは置いといて、素直なコウの気持ちがとても嬉しい。


「ありがとうコウ!
大好き!」

「わわっ!
ひかりったら!」


おもいっきりコウに今度は私から抱きついた。
嬉しさをどう表現していいのかわからなくて…
これが一番伝わる気がした。


「ひかり、ちょっと恥ずかしいよ!」

「いいじゃん!」


弟のように思ってきたコウ。
そのコウが少し成長して大人になった。
身長も少し伸びていた。
座っていてもわかる。


「コウ、ちょっとピアスの量増えたんじゃない?」

「うん!
ひかりがいなくなってからの、本気で寂しい思いをした数分開けた!」

「もう!
嘘ばっかり!」

「あはは!
バレた?」


久しぶりに冗談を言い合う。
こんなに心から笑ったのも久しぶり。
コウのおかげですごく元気が出た。







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