俺がイイんだろ?
「ひかり、これだけは覚えておいて欲しい」
「何?」
真っ直ぐな瞳で私を見るコウ。
「ひかりは1人じゃないんだよ。
僕に天馬さん…美嘉さんも、ひかりがいなくちゃダメだ」
コウ…
「僕なんて特にひかりがいなきゃダメ」
さっきからずっと…
どれだけコウに嬉しいことを言われているんだろう。
「だから…
生きてていいの?なんて思わないでよ…」
またコウに強く抱き締められた。
抱き締めた腕は、少し震えていた。
「うん…ゴメンね」
「ほんと心配したよ…
ひかりが死んじゃったら、僕も追いかけるとこだった!」
「それはダメっ」
ここまで私を心配してくれて、思っていてくれるコウの気持ちが…私の救いになった。
ありがとう…コウ。
何回も心の中でそう言った。
「さてと!」
コウはいきなり立ち上がったから、私も立ち上がる。
「ひかり!
ちょっと手貸してね!」
「えっ!?」
コウはいきなり私の手をとって走り出した。
「ちょっ…ちょっとコウ!?」
キラキラした笑顔で走るコウ。
なんだか私は、初めて初恋をした女の子のような気分になった。
ドキドキしてウキウキする感覚。
心がスーッと晴れた気がした。
「あ!タクシー発見!」
「コウ!
どこに行くの?」
「それは行ってからのお楽しみ!」
タクシーを拾ってコウが言う目的地へと向かった。
タクシーに乗っている間も、コウは強く手を握って離さなかった。
京平とは違う細い指と腕。
小さい手のひら。
だけど、京平にはない感覚。
だからすごくドキドキした。
なんだか…
中学の頃に片思いだった人に似てる…
「ん?
どうかした?」
「へっ!?
な、なんでもないよ!」
「そっか!
ひかりはほんとかわいいよ」
「もう…」
このドキドキはなんだろう。
恋と似た感覚。
だけど違う。
やっぱりコウは…私のかわいい自慢の弟だよ。
…血繋がってないけどね!
小さくコウに聞こえないように笑った。