俺がイイんだろ?
「着いたー!」
「こ、ここは…」
タクシーが着いた先は、高級マンションが並ぶ…私には場違いなところだった。
「コウ…
ちょっと待って…」
「どうかした?」
「もしかして…コウここに住んでるの?」
「どうでしょう?」
コウの相変わらずの笑顔。
コウが笑って誤魔化したりすると、なんだか許してしまう自分がいた。
私ってコウには甘いなぁ
「それじゃ、行こっ!」
「あっ!」
手を引っ張られて、半ば強引に連れられる。
あ…そういえばコウ…
髪の色と髪型変わってた…
今さらコウの変化に気づく私。
コウは黒髪から銀髪に変わっていて、髪のセットの仕方も変わり、前よりロックに近づいていた。
ちょっと見ないうちにカッコよくなっていたコウ。
私は…?
私はコウから見て変わった…?
聞くのが怖くて、ただ黙ってコウについていった。
――
すごく高そうなマンションに入ってエレベーターに乗る。
どんどん上に上がるエレベーター。
32階で止まった。
「さ、行こっか」
「う、うん…」
いかにも高そうな通路を二人で歩く。
ほんとにコウがここに…?
疑問に思いながら、辺りをキョロキョロする。
「やっと着いた!」
「ここ…」
部屋の前まで来て、なぜか緊張した。
ピーンポーン
「来たよー!」
え…?
コウの部屋じゃない…?
普通自分の部屋に入る時にインターホンなんて押さない。
呼びかけることもしない。
どういうこと…
そう思っている時、カチャっと鍵が開く音がした。
「遅くなってゴメンね!」
「あぁ、いいよ」
「……」
扉の前にいたのは…
私がすごく会いたかった人。
「てん…まさん…」
「久しぶり、ひかりちゃん」
気づいたら私の目から涙が溢れていた。
「あー!
天馬さん、ひかりを泣かせちゃダメだよ!」
「俺のせいか…?」
「うぅっ…」
一向に涙はおさまらない。
涙が止まらない理由は…きっとコウの時と同じ。
安心したから。
「どうしてくれるの天馬さん!
僕の大事なひかりにー!」
「わかったわかった。
俺が悪かったよ…
早く中入れ」
コウの手に引っ張られて、泣きながら天馬さんの部屋へと入った。