俺がイイんだろ?


――


「ところで…ひかりちゃんに幸之心」

「は、はい!」

「なにー?」


やっと私は泣き止んで、三人でリビングにあるソファーに座っている。
相変わらず天馬さんは私が大好きなカフェオレを出してくれた。


「…いつまで手ぇ繋いでんだ?」

「へっ!?」

「あ」


そういえば、コウと手を繋ぎっぱなしだった。
恥ずかしくなって、どちらからともなくパッと離した。

恥ずかしい…!


「なんだ、お前ら付き合ってんのか」

「ち、違いますよ!」

「うん…まぁ違うけどさ。
すぐ否定しなくたって…」


コウは不機嫌な顔をしてそっぽを向いてしまった。

あれ…
私何か悪いこと言っちゃったかなぁ…


「幸之心、お前わかりやすいな」

「ほっといてよっ!」


天馬さんの言葉で、ますます不機嫌になってしまった。

やっぱりまだ子供っぽいところは変わってないみたい。

ついひきつった笑いになってしまった。


「…さて、本題なんだが」

「待ってました!」


いきなり調子が戻るコウ。

コウは相変わらず単純だ…

そんなところもかわいいと思いながら、天馬さんの話を聞く。


「ひかりちゃん、俺が電話で言ったこと…覚えてる?」

「電話で…?
……あ!」


そういえば前にバンド組まないか?と電話で言われて話した。


「バンドのことですよね?」

「そうそう。
今日から本格的に始めようかと思ってな」

「…!」


ワクワクする気持ちが込み上げる。
ずっと叶えたかった夢。
その第一歩を踏み出そうとしていた。
…でも、いくつか疑問に思っていることがあった。


「天馬さん…
バンド本格的に始めるのは嬉しいです。
だけどお仕事は…?」

「あぁ、辞めたよ」

「辞めた!?」


衝撃的な事実に、驚きを隠せない。


「音楽の道で食ってくって決めた。
だからひかりちゃんを誘ったんだよ」

「天馬さん…」


天馬さんの本気な気持ちが伝わってきた。
あんなに安定した職業を辞めてまで音楽に携わる。
売れるかどうかもわからない危険な賭け…
その賭けに天馬さんから乗った。
それがすごくカッコ良く思えた。


「あ…
後もう1つ」

「なに?」

「ギターは…誰がやるんですか?」

「「……」」


天馬さんとコウが黙る。
無理もない。
そこのポジションは…京平だったから。


「…まぁ、ひかりちゃんが良かったらなんだけど」

「はい…」

「もう新しい奴見つけておいたんだ」


仕事が早い…
さすが天馬さん。

少し内心ガッカリしていた。

そうだよね…
京平はリリクロだもん。







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