俺がイイんだろ?
「ん…待てよ」
いきなり京平さんが何かを考えこむように黙りこんだ。
どうしたんだろう…?
「なぁ…ひかりちゃん」
「はっ、はい!」
「もしかしてキミ…放送部?」
「えっ…」
なんで知って…
「なんで京平が知ってんの!?」
私の疑問はコウが変わりに聞いた。
「いや…なんつーの。
特徴的だろ、声」
「特徴的…」
そんなこと初めて言われたよ…
周りがシンと静まり返る中、京平さんは私をジッと見つめる。
その真っ直ぐな瞳にドキドキがおさまらなかった。
「やっぱり放送部か…うん」
「どうしたんだ京平」
天馬さんが京平さんの肩に手を置く。
「いや…なんでもねんだ。
練習始めようぜ」
「あ、あぁ…」
京平さんの一言で、みんなは練習に戻った。
私はずっとさっき京平さんが言った、「特徴的だろ、声」というのが頭の中でこだまして、全然みんなが練習している音なんて耳に入らなかった。
あの時、京平さんは何を考えていたんだろう…
そればかりが気になって仕方なかった。
――
練習が終わり、みんなが帰る準備をしていた時。
「今日は京平がバンドに入ったことだし!
パアッと天馬の家でパーティーしようぜ!」
美嘉がいきなりテンション高くそう言った。
パーティーかぁ!
楽しそう!
「あ、俺パス。
仕事残ってっから」
「えぇー
天馬ノリ悪い」
膨れっ面な美嘉を困った顔で見る天馬さん。
相変わらず天馬さんは優しい人だ。
「俺もパス。
ちょっと天馬さんに話があってな。
美嘉とコウは先帰ってくんねぇか?」
美嘉とコウ…?
私は?
「うん、わかった!
美嘉さんっ、僕と一緒に帰ろうよ!」
「はぁ!?
なんでテメェなんかと…!」
「いいじゃんいいじゃん!
牛丼奢るからさ!」
「マジ!?
行く行く!」
美嘉とコウはスキップしながらスタジオを出て行った。
「ふふっ」
相変わらず単純だなぁ美嘉は。
ちょっと笑いながら、私も帰ろうとした時…
「ひかりちゃん」
京平さんに呼び止められた。
「な、なんでしょうか…?」
「おい京平。
ひかりちゃんは関係ねぇだろ?」
「いや、関係あんだよ」
へ…?
頭の中が一瞬にして真っ白になった。
「三人で話がある。
場所移動しようぜ」
京平さんはそそくさスタジオを出て行った。
天馬さんの顔を見ると、なんだろうな?という顔で反応してくれた。
私と天馬さんは何も言わず、京平さんの後を追った。