俺がイイんだろ?
「そんな顔しないでひかり」
「あ…ゴメンね…」
顔に出やすい体質ってほんと嫌…
コウに心配かけちゃった…
落ち込むと、天馬さんが私の頭をポンと撫でてくれた。
「無理もねぇよな。
すぐ忘れるなんてできねぇから」
「天馬さん…」
天馬さんの言葉に少し目に涙が溜まる。
あ…ダメだ!
また泣いちゃいけない!
必死に涙をこらえた。
「ひかりちゃん、さっそくなんだけど…
ギターに入ってくれる奴呼ぼうかと思って」
「あ!
今来てくれるんですか!?」
「うん、一応ね。
あいつもうバイト終わってるはずだから大丈夫だと思うし…」
天馬さんが電話をかける。
どんな人だろうとすごくドキドキした。
「あぁ…ん、じゃあ待ってる。
あぁいるよ……おう、楽しみだよ…じゃあな」
何か話し込んでたみたいだけど…なんだろ?
「今から来るとよ」
「マジ!?
ひかる来るの!?」
「急いで行くからって言ってたよ」
ひかるさん…
その名前を聞いて、微かに残る記憶が浮かんだ。
あれは12年前……
――
「ひかり…離れたくないよ…」
「ひかりも嫌…
行かないで…」
小さい頃に誰かと別れ際に泣いている私。
誰なのかはまったく思い出せない。
「行かないと…」
「あ…」
だんだん離れていく誰かもわからない人。
だけど私は泣いている。
すごく大切な人じゃなきゃこんなに泣いたりなんてしないよ。
あなたは…誰?
心で呼びかける。
呼びかけても彼が戻ってくるわけではない。
どうして思い出せないんだろう…
そう思っていた時だった。
「ひかり!」
「っ!?」
ハッと現実に戻る。
私の名前を呼んだ方を見ると、見知らぬ人が立っていた。
「あ、あの…」
初めて会ったはずなのに、初めて会った気がしない。
なんだろう…この感覚…
そんなことを考えている暇もなく、彼は私のところへ走ってきておもいっきり抱き締めた。
「へ!?」
「会いたかった…ひかり」
いきなりのことで私の頭は混乱状態。
「おいひかる…
ひかりちゃん、びっくりしてるぞ」
「あっ、わりー!」
ひかるさんは私から身体をパッと離した。
はぁ…びっくりしたぁ…
「今さら挨拶なんてしなくてもいいと思って…
わりーな、ほんと」
「あ、いえ…」
普通に反応しただけなのに、ひかるさんはすごく寂しそうな顔をした。
「やっぱ覚えてねー…か」
「…?」
ひかるさんが言っていることが理解できなかった。