俺がイイんだろ?
「無理ねーよな。
何年も前のことだし…」
「何年も前のこと…?」
不思議と私の夢のことが、ひかるさんが言っていることと重なった。
もしそうなら…
謎は解けるよね。
「あの…ひかるさん」
「…ん?」
優しい瞳で私を見るひかるさん。
どこか懐かしいような、どこか悲しそうな…
そんな瞳にも見えた。
「あの…以前どこかでお会いしましたか…?」
「ん、あ…いや!
会ったっつーか…」
口ごもるひかるさん。
なんだか様子が変だなぁ…
「ひかる、ちゃんと言ってやれ」
「そうだよひかる!」
天馬さんとコウはひかるさんが私に何を言おうとしているのかわかっているみたい。
「ん…そーだよな」
ひかるさんは真っ直ぐ私を見つめる。
私もじっと見てみると、ひかるさんはどこか私に似ている気がした。
名前も似てる。
「ひかり…」
「…はい」
緊張が私とひかるさんの間に走る。
「オレ実はさ」
「……」
「お前の実の兄なんだ」
「!?」
いきなりのことで、頭が真っ白になった。
え…どういうこと?
私の実のお兄さん…?
もしかして…
夢に出てきた人って…
「信じらんねーよな…いきなりこんなこと言ったって」
「……」
私の頭に微かに残る昔の記憶。
なんでこんなに思い出せないの…
…あ!
そういえば私…事故に遇って記憶喪失に…
「私…小学校六年生の時に事故に遇って記憶喪失になっちゃって…
だから記憶が…」
「そうだったのか!?
大丈夫か!?」
血相を変えて私を心配してくれるひかるさん。
「あ…大丈夫です。
ひかるさん…思い出せるかわからないけど、昔のこと…いろいろ教えてください」
「もちろんだよ…」
ひかるさんはそう言って、昔にあった出来事を話始めた。
天馬さんは「俺達席はずすか?」と言っていたけど、私は聞いてて欲しいですと伝えた。
「ひかりが6歳の時…
父さんと母さんが離婚したんだ」
私が6歳の時…
あ、私夢でも12年前だっていうのはわかってた。
「オレは父さんに…
ひかりは母さんに引き取られることになってさ」
「はい…」
夢と似てる。
いや…現実だったんだ。
「それっきり、オレはひかりと会えなくて…
でも毎日ひかりの心配ばっかしてたんだ」
「そう…なんですか」
まだ実感はない。
だけど兄だということはすごく私の心に伝わった。
「オレさ、音楽好きで…ひかりと小さい時にギター一緒に弾いてたんだよ」
「「「!」」」
私だけじゃなく、天馬さんもコウも驚いていた。
音楽関係なんて一度もしたことなかったと思っていたけど、充分携わっていた。
しかも兄と。
「昔っからひかりは歌上手くてさ、声も特徴的で…
ひかりのためにギター弾くのが楽しくてしかたなかったんだ」
「特徴的…」
懐かしい言葉。
こんな時にも京平を思い出した。
「東京にはもともと父さんと住んでて、たまたまコウとばったり会ってな」
「え?
コウと知り合いなんですか?」
「おう!
まぁ詳しくは言えないけど…腐れ縁ってヤツ?」
「そうかもね!」
二人は仲良さそうに笑っていた。
でもコウとは5歳も離れてるのに…
気づいたら、私はだんだん記憶を取り戻しつつあった。
ひかるさんの歳も思い出した。
「っつーのは置いといて。
コウにまだギター弾いてるの?って聞かれて、当然だ!っつったら、コウがバンド組んでるから入らない?って誘ってきたんだ」
そうなんだ…
コウはニコニコしていた。