俺がイイんだろ?
「そんで天馬と会って話してるうちに…ひかりの話が出てな」
「そうそう!」
「ほんとビックリしすぎて夢かと思った。
だからつい会ってすぐあんなことしちまったワケ。
ほんとにゴメンな」
「あ!
いいんです!」
確かにビックリしたけど、嫌な気はしてなかった。
多分初めて会った気がしてなかったからだ。
実際に会ったのは初めてじゃないしね。
「ひかりとバンド組めるなんて、ほんと嬉しすぎて…」
「ひかるさん…」
ひかるさんの思いに、胸が幸せでいっぱいになる。
「その“ひかるさん”てやめてくれよ。
オレ、血繋がってる兄だぜ?」
それもそうだよね…!
まだ実感わかないけど、お兄さんなんだ。
「なんて呼んでた…?
昔の私」
「ひかるって呼んでたよ。
すっげー可愛くな!」
満面の笑みでそう言うひかるは…とても眩しくて、きっと自慢の兄だと思う。
「これからギター兼兄としてヨロシクな!」
「うん!」
私達のバンドに、すごくカッコよくて優しくて明るい…自慢な兄がメンバーに加わった。
「…あ!
ひかる、1つだけお願いがあるの」
「なんだなんだ?
かわいい妹のためならなんでもするぞ!」
「もう!ひかるったら!」
忘れかけていた上に、今日久しぶりに会ったばかりなのに…
ずっと長く一緒に暮らしていた気分になった。
「Lily&crowって知ってる?」
「もちろん!
有名なバンドはほとんど知ってる」
なら話は早いよ…良かった。
「リリクロのギターのきょうへ…じゃなくて、京を越えるギタリストになって欲しいんだ」
「ひかり…」
もう負けてられない。
好きになんてなってられないよ。
「…おう!
ひかりと天馬とコウがいりゃ、どのバンドにも負けねーよ!」
「ひかる…!」
そのひかるの言葉がどれだけ頼もしいか…
それは私自身も、天馬さんとコウもわかっている。
「…よし、やっとメンバーが揃ったな」
仕切り直す天馬さん。
「ねぇ天馬さん!」
「ん?なんだよコウ」
「バンド名どうすんのー?」
確かにバンド名決めてなかった!
一番大事なのに!
「私も気になります!」
「なんだよ?バンド名」
「俺が勝手につけちまったけど…」
つぎの天馬さんの言葉を瞬きもしないで待つ。
「Blue Heart Pegasus…訳してBHPだ」
「「「……!」」」
か…っこいい…
インパクトがある名前で、私は言葉が何も出なかった。
「超カッコいいじゃん!
由来なに!?」
「落ち着けコウ。
由来は…後々わかるよ」
「?」
後々…?
この時の私は、バンド名の意味なんて深く考えていなかった。
…すごく重要な意味が込められているとも知らず。