俺がイイんだろ?


京平さんの後を追って着いたのは…


「て、天馬さんの家だ…」

「おい京平、なんで俺の家なんだよ…」

「天馬さん仕事残ってるって言ったよな?
だから天馬さん家が一番いいかなと思った」


た、確かにそうかもしれないけど…

キョトンとしている京平さんを見て私と天馬さんは思った。
京平さんは行き当たりばったりの人だと。













――


「はい、ひかりちゃんの好きなカフェオレ」

「わぁ!
天馬さん、なんで知ってるんです!?」


いつも私が行くコーヒーショップにあるカフェオレ。

確か天馬さんとは行ったことないと思ってたはずだけど…


「ま、まぁ
そんなことはいいじゃねぇか」


頭をかきながら、少し顔を赤くする天馬さん。

うわぁ…天馬さんも照れるんだなぁ

そんな当たり前なことに感動している私を見て、京平さんは笑っていた。


「さて、本題だけど…」


京平さんが話始める。
三人で天馬さんのソファーに座った。


「ひかりちゃん、今まで音楽関係なんかしたことあるか?」


率直に聞かれた。
でもちょっと予想はしてた。


「いいえ…ないです」


私は中学の時にバスケ部で、高校に入ってからは放送部だから音楽関係に携わったことはない。


「ふーん…」

「おい京平…まさか…」

「あ、やっぱり天馬さんは鋭いな。
さすが10年以上の付き合いなだけあるな」

「10年以上!?」

「あぁ…そういやひかりちゃんに説明してなかったよな」


天馬さんの説明はこう。
京平さんと天馬さんは昔家が隣同士で、兄弟のように仲が良くていつも一緒だったらしい。
そして前から二人でハマっていたのは…音楽。
でも京平さんはプロとして活動したくて、天馬さんは趣味として活動したい。
意見が食い違った上に、京平さんが引っ越したことで二人はまったく会わなくなったみたい。


「まさか…美嘉とバンド組んでると思わなかったよ」

笑いながら語る京平さん。


「俺もびっくりしたさ。
お前が美嘉と同じ高校だったとはな」


二人は美嘉のおかげで再会して、またよく会うようになった。


「まさか、本格的にバンド活動してるとは思わなかったよ、てん」

「その呼び方やめろよ、きょう」

「お前だって前の呼び方してんじゃねぇか!」


笑い合う二人。
私もつられて笑った。
てんときょうと呼び合う二人は、遠く離れていても固い絆で結ばれている気がした。


「とまぁこんな昔話はいんだよ。
てんと話してっとつい関係ない話まで喋りすぎちまう」

「俺のせいか?」


フッと笑う天馬さん。

ほんとに仲いいんだなぁ
ちょっとうらやましいかも。


「ひかりちゃん」

「なんですか?」

「あ、いや…
なんかひかりちゃんてしっくりこない」

「は、はぁ…」

「ひかり」


ドキン


大きく私の心臓が高鳴った。

名前を呼び捨てで呼ばれているだけなのに…
なんでこんなにドキドキするんだろう…


「ボーカルにならないか?」


その一言が、私の人生を大きく変えた。





< 4 / 33 >

この作品をシェア

pagetop