俺がイイんだろ?
席についてからも、さっきの天馬さんが言った言葉を思い出す。
「俺も東京に行くから」
私はなんて卑怯なんだろう。
あの時天馬さんに行くなと言われていたら、きっと行かなかった。
そして天馬さんの優しさにすがって…
心もこもらないような歌を歌って。
天馬さんはそれをわかってたから…引き留めなかったんだ。
「うっ…」
また涙が溢れる。
強くならなくちゃ…
何かを変えたくて、つまらない日常を素敵なものにしたくて上京する。
京平さんがすべてで上京するわけじゃない。
きっと私自身に変化が欲しかった。
カサ
そう思っていた時、私の左ポケットから紙が擦れる音がした。
「なんだろう…」
そっと取り出すと、“ひかりへ”と書いた手紙だった。
中身を読んでみた。
〈ひかりへ
バカ!
何勝手に上京してんの!
親友のアタシに一言もないなんてさ。
でも…アンタの気持ちも分かるよ。
心配かけたくなかったんでしょ?
だけどさ、アンタのことなんてお見通しっ
二年前から知ってるよ。
ひかり、アタシね…
東京行ってプロ目指すから。
天馬とのしんとのバンドは解散したよ。
ソロで活動したくてさ。
だから待ってろよ?
アタシもすぐ行くんだからな!
ひかりのたった一人の親友の美嘉より〉
「美嘉…
相変わらず字汚いなぁ」
笑いながら泣いていた。
美嘉も天馬さんもコウも頑張ってる…
私も頑張らないと。
私は京平さんを探しに行くだけが目的じゃないから。
「…夢、目指すよ」
そう…
私の夢は、今始まったばかり。