俺がイイんだろ?

ほんとのこと。


-ひかりside-


大勢の人達で溢れかえる東京。
私はその地に足を踏みいれた。


「ふぅ……よしっ!」


決心をして電車を出た。
これから素敵なことが起きてくれることを信じて。


「どこだろ…」


駅から出て、自分の住むアパートを探す。

地図によれば、確かこの辺りなはず…

キョロキョロと見回してみるけど、アパートがたくさんあってどれなのかわからない。

うーん困ったなぁ…

そう思っていた時、


「お嬢さん、何してんの?」

「へっ!?」


後ろから声をかけられて振り向くと、スーツ姿にサングラスの男の人が立っていた。

ちょっと怖いかも…
でも道聞いてみようかな…?

「あ、あのっ…
道に迷ってまして…」

「あぁ、そうだと思って声かけたんだ」


そうだと思って…?

普通のことを言われているのに、私はなぜか違和感を感じた。


「地図は?」

「あっ、はいっ
これなんですけど…」


持っていた地図を差し出す。


「ここなら、そこの角右に曲がって…
ずっと真っ直ぐ行くと、突き当たりにコンビニがある。
そこをまた右に曲がれば見つかるよ」


意外と親切…!

東京の人はみんな冷たい人だと勝手に妄想していた私には新鮮だった。


「ありがとうございます!
それじゃあ失礼します」

「ちょっと待て」


男の人と別れる時、いきなり呼び止められた。

なんだろう…

ちょっと身体がすくむ。


「あ…まぁ
言えるならでいんだけどよ…
名前なんての?」

「へっ?」


な、名前…?


「…立花です」

「下は?」

「ひかりですっ」

「ふーん…そっか
じゃあな」


それだけ言って、彼は背を向けたまま手をふって行ってしまった。

なんだったんだろ…
まぁ、道も聞けたし!
感謝しないとね!

彼の背中にお辞儀をして、引っ越したアパートへ向かった。












――


プルルル…


『はい』

「もしもし?
オレだけど」

『おぅ、龍!
連絡待ってたぜ』

「無事、道案内すませてやったぞ」

『サンキュー。
助かった』

「柄でもねぇことさせやがって…」

『いいじゃねぇか!
今日ビール奢るって』

「約束だからな」

『おう。
俺は約束守るからな』

「どうだか…」





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