代償
「………もう、許してくれなんて、言える時期じゃねぇことは、分かってる」
見捨てたんだ。
「………名前も覚えていないんだ。………絶叫する顔しか、覚えてない」
「上城、お前、5年も引き摺ったのか?」
「引き摺ってるさ。………現に、今も」

足に付けられた重石。
重すぎて、どうにかなりそうだ。
足を斬って、重石を切り離しても。
どこからか、その重石………罪悪感は来る。

罪悪感の塊だ、重石は。
そのうち、背中まで登ってきて、押し潰す。
………その時、俺は死ぬんだろう。
罪悪感に押し潰されて。
起き上がれず。

「上時総長」
キャーラが、俺の目の前にスプーンをかざす。
「今さぁ。それ、悩むべき?今さぁ、文ちゃんの救出じゃないの?」

「確かに。………上時総長、考え直そう」
「………ああ」
文香の救出。
が。

喧嘩?
したのか。
俺。

『決めさせてよ!』

強引に会うことを禁じた俺も悪いのか。
「上城、何で文ちゃんは家出したんだ」
………マスター。
痛いことをつくな。
「会うなって言ったんだ」
「一方的な決め付けか」
そうだな。
「仕方ないんじゃないかなぁ。上時総長、人を信じないじゃん」
「あーあ、それか」
………そうなのか。

確かに、人を信じない。
トラウマ、なんだろう。
これは。

信じたい。
が。

防護壁が厚すぎる。
何にも、どうともならない。
砕こうとも。
砕けない。
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