代償
………どうするか。
「………上時総長」
「どうする?上城、時間の問題になるぞ」
「分かってる。………分かってるが」
何もできない。
手を出したら。

文香が、どうなるか。
犯されでも、したら?

あんな野郎に破瓜なんかされたら?
嫉妬、せずにいられるか?
暴れずに、いられるか?
殺さずに、いられるか?

殺すだろう。
間違いなく。

………待て。

………は?
「上城」
「何だ」
「文ちゃんが好きか」
………!?
「何であんな乳臭い小娘好きになれと」
「へー?そう?上時総長、好きそうだよ。文ちゃん」

乳臭い小娘。
あんな小娘ごときに、大の大人が振り回されるか。

「下時組の連中に破瓜なんてされて、黙ってられる?」
「………いや」
「ほら、好きじゃん。素直に言っちゃえよ、上時総長」
「………言えるか、バーカ」

奴は、何してる?
俺を恨んでるか?
追い出したこと。

なぁ、文香。
俺、ダメなんだ。
誰も信じれないんだ。
怖くて。

俺を信じる人はいても。
俺から信じることはできない。
一方的で。
不安定で。

ガキは俺だ。
訳が、分からなくて。

『総長』なんて、名乗れる奴じゃない。
………悪い。

許せ。
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