代償
総長、留める。

「………え?」

5月半ば。
決闘まで、1ヶ月ほど。

………そんな中。
私は下時組にいた。
「文香ちゃん」
「文ちゃん」
………前橋組と、変わらない。
みんな親切で。
麻賀族長も。

「………勇………人さん」
普通に聞いて。
誰もが聞き取れる範囲まで復活した声。
「何?文香」
「わ、たし………学………校」
行きたい。

暫く行ってない学校。
梓にも、会いたいし。
皆にも会いたい。
単位も取らなきゃいけないし。
授業も遅れてる。
………かなり。

「そうだなぁ。………すぐそこの進学校だよな」
うん。
「いいんじゃないかな。麻賀族長にも話通すから」
………うん。

………上時は、許してくれた。
………登下校に、前橋組の組員がついて。
キャーラにユートさん。
それに、凜音さんも。
上時も来たし。

………懐かしいな。
あの頃。

………あ!
教科書!

………上時んところだ………。
………どうしよう。
………。

………取りに、行かなきゃ。
新しく買うのは、お金かかるし。

「教科………書………」
「え?」
「取り………に、行か………な………いと」
「………前橋組の総長のところか?」
………うん。

「………それも、」
麻賀族長に話通すから。
………すぐ。
麻賀族長て。
………弱いなぁ。


………できれば。
1人で行きたい。
あそこに。
勇人さんは連れて行きたくない。


………上時に、会える?
………行ったら。
でも。

どんな顔する?
困る?
怒る?
渋る?
………笑う?

………笑いは………しないよ。
………多分。

でも。

笑って欲しい。
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