代償


ついに。
来ました、上時の家。
時刻は6時。

いないはずだ。
奴は。


マンションに入る。
管理人さんが、
「あれ?文香ちゃん」
そう、声をかけてくる。
「久しぶり。元気だった?」
コロッとした体型。
毎日見ていた。

管理人さんの問いかけに頷いて、エレベーターに乗る。
確か、13階だよね?
ここ、15階まであるけど。

………何か。
本当、久しぶりだ。
1月も来なかっただけで。


………家の中。
大丈夫かな。

上時にメール、してないけど。
大丈夫だよ。
教科書、取りに行くだけだし。
うん。
弁解はできる。
頭のいい上時なら、きっと理解する。

そう、信じる。

13階。
上時の家。
緊張して、手先が冷えてる。
震えてるし。
中がどうなってるか………分からない。


もし………上時がいたら?
何される?
殺される?
犯される?

………そんなの。
嫌だ。
さっさと、取ってこよう。



家の中に入ると、
「………………!!?」

異臭が鼻を突いた。
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