代償
「………」
正気がない、瞳。
くすんだ色。
どす黒い………虚ろな………。
眼窩は窪んで。
頬も痩けて。

……変だよ………。
「………上時」
何度も擦った目元は赤く腫れて。
血が滲んで。

「………つかれた」
小さく呟いて。
その場に座って。
壁に背凭れて。

「………やめたい」


心の底からの………叫びに聞こえた。
心身共に傷付いて。
休む暇なんてなくて。

「………なぁ」
「………」
「………ねたら………しねるか………?」

………幻覚でも、見ている気なのかな。
私を見て、言う。

「………文香」
「………」
「………もう………つかれた」

そう言って。
俯いた。

見たことない。
こんなに、弱って。

「………上時」
「………」
上時の顔を覗く。
虚ろに目をうっすらと開き、静かに息をしている。

………どう、するべきなんだろ。
………私。


そんな中。

携帯が鳴った。
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