代償
その行為で。
上時が少しでも楽になれるなら?

………私は。
上時に………?

………そんな。
………っ………。

「………」
起き上がって、上時はため息を吐いた。
「嘘嘘。………仕事、行くか」
力なく呟いて、苦しそうに笑った。

お風呂場に消え、間もなくシャワーの音が聞こえてきた。
えずく声が混ざる。
………また、吐いてるの?
まだ………何かを吐き出すの?
………何で。


「………」
何も出来ないで。
その場に座り込んで。
立てない。
………。



「………はぁっ」
アルコールの抜けない吐息。
お風呂場から出てきた上時は、買いだめしていた新しいワイシャツを掴んだ。
「………殺されるな、これは」
「………」


行かないって。
休むって。
行きたくないって。
言ったのに。
何で。

行かないでよ。

変な期待させて。
責任。

「………責任、取ってよ」
気付かない、自分でも。
上時の腕を掴んで。

こんなこと。
望んでない。
望む、わけない。

「無理すんな。望んでないだろ」
「………っ」
「未成年に手ぇ出せるわけないだろ」
「変な期待………させたの、どっちよ!?」

………叫んでた。
上時に向かって。
< 132 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop