代償
重い身体。
重い目。
重い目を抉じ開けて、辺りを見る。
………ああ。
そっか。
腰の鈍痛。
全身が軋んでる。
今、何時?
「………起きたのか」
すぐ側で声がした。
聞き慣れた、大好きな声。
上時だ。
上半身裸でスエットのズボンをはいている。
昨日、上時が新しく出したワイシャツは、私が纏ってる。
「………大丈夫か」
「………うん。大丈夫だよ」
「痛いだろ?身体中」
「やめてやるかよって言ったじゃない。何回………」
あれ?
「どんな気分だ。破瓜の後って」
「………痛い」
「痛くなかったら逆に凄いな」
「………」
落としていた視線を上げ、上時を見た。
昨日までの、辛そうな表情はない。
ゆっくりと私を抱き締める。
ワイシャツ、1枚を隔て、上時の熱を感じる。
………してる時とは、違う温かさ。
心地いい。
「ホストって、凄いね」
「肉欲なく女を抱くって死ねるぞ」
「そうなんだ」
「文香は本気で抱きたいって思ったが」
………あれ?
やっぱり。
「やっと、まともな話し方出来るようになったな」
「うん………」
何でだろ。
まともな話し方になって。
でも。
心に引っ掛かる。
何かが。
「………上時」
「どうした」
「気持ちよかった………」
「なら、よかった」
腕を伸ばし、上時の首に巻いた。