代償


勇人さんが校門まで迎えに来る。
「おかえり」
そんな事を言って。
「うん」
適当に返事して。
隣を歩く。

ああ、でも。
………上時が隣にいてくれたら。
手を握ってくれたり。
適当な話したり。

こんな、想いじゃないはず。
きっと。

『バーカ。よそ見すんな』
なんて。
言ってくれるのに。
上時なら。
バーカって。
呼ばれて嬉しいのは、上時だけ。



………ああああああああ!!!
鬱陶しい!!!
何なの!?
本当………。

分からない自分にイライラして。
知りたいのに。
答えに辿り着けない。
追いかけても。
手を伸ばしても。
届かなくて。

「………もぅ、ぃゃ」
勇人さんに聞こえないように。
小さく呟いて。

『嫌』なんて。
戻れないのに。
いつまでも、抗って。
決闘で、上時が心配で。
死んだら。
いなくなったら。

好きとも言えないまま。
上時は死んだら。

『大嫌い』
『上等』
なんて言葉もなくなる。

何で『上等』、なのよ。
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