代償
「何を植え付けたんだ?」
壁と、キャーラの間。

怖い。
今さら、思い出す。
前橋組の、No.2だと、いうことを。

「自白しないなら、させるぞ。拷問なり、薬なり、使って」
「警察が、そんなこと、」
「するわけないだろ。するのは、オレだぞ」
その顔は。
警察じゃなくて、前橋組の2番目の顔で。

本気だ。
空気が張りつめる。

「何も、植え付けてない」
「植え付けてない?」
「本当、だよ」
「信じると思うか?下時の野郎の言葉なんて」
「………っ」

息が、詰まる。
「言えよ、何を植え付けた」
「何も植え付けてない!」
「じゃあ、どうして上時総長が動いてないんだ!?」
顔の横の手が拳になり、壁を叩く。

嫌だ。
怖い………!!

「変なんだよ、総て。変過ぎて、言葉も出ねぇ」
キャーラが、キャーラじゃない。
本性なの?
これが。
「お前………」
「………!?」

「前橋組を、落とそうとしてるのか?」

落とす?
何を、
「お前、前橋組を落とすのは、重罪だぞ。知っているのか」
「そ、んな、落とす、………とか」
「前々から、気付いてたんだ。前橋組が、狂い始めていることにな」

狂い始めている?
ナニ、ソレ。
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