代償

「ほんで上城、下時(しもとき)組が騒いでるって話、聞いたかい?」
「はぁ?下時組ー?」
「ああ。苦情の嵐らしいぞ。隣街では」
「あぁ、あれか。そういや、ケーサツから話が入ってたな」
「どうするんだい?」
「潰すに決まってんだろ?下時組が何しようが、前橋にゃ敵わないだろうよ」

………喧嘩話?
「まぁ、そのうちに集まらせる。マスター、よろしくな」
「ああ。任せとけ」
「さぁて、仕事にでも行ってみるかなぁ」
「サボったのかい?」
「バカ言え。オーダーが入りすぎて整理が追い付かないんだと。情けねぇ」
「上城、顔はいいもんな」
「だろ?」
苦笑して、上時はコーヒーを煽った。

「文香、後は適当に帰れ。仕事行ってくる。夜は帰らないからな。学校は適当にしろ」
カウンターに一万円札を置く。
「マスター、こいつ発声障害で口が利けねぇんだ。ケータイで打つだろうから、適当に相手してやってくれ」
………えぇ?
「ここのパフェは美味いって聞く。食ってみろ。マスター」
「あいよっ」

じゃあな。
ピアスを揺らして、席を立った。

「文ちゃん。はい、溶けないうちに」
イチゴのパフェ。


………美味しい!
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