代償
『───好きで、生まれた訳じゃない』
消え入るような、語尾が掠れた声。

傷口に触ってしまった………。
多分。
いや、そうだ。

『じゃ、何でこの世に生きてるの?』
『───ぃゃ、』
『さっさと死ねばよかったじゃない。こんな仕事、イヤでしょ?』
『───それは、』
『辛いだけ。痩せて窶れて内側までボロボロ。この前だって、そうでしょ?』
『──────ぅ』
『生きる意味、持ってるの?ボロボロの身体だけでよく生きていられるね』
『──────がう』
『ないんでしょ?意味』
『違う───!!』

『文香ちゃん、そうだって』
「───やめて」
『死に場所探すような奴、』
「お願いだからやめて───」
耳が、痛い───。
お願いだから、これ以上、攻撃しないで。
ただでさえ、傷付いているのに。

『何?───好きなの?』

愛してるって言える?
電話渡したら。
上時さんのために。
泣ける?
哭けるものなの?
君の分際で。


言えない。
言えるわけない。
『愛してる』なんて。
無理だよ。
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