代償
絶叫が、空を裂く。

「木屋あぁぁぁぁぁ!!!」
水平に振ったサバイバルナイフ。
木屋の右脇腹を深く裂いた。

「ぅ………あぁぁぁぁぁぁ!!!」
木屋の身体が大きく反り、地に身体を叩く。
のたうち回る。

「前橋組って、バカだよな」
「テメェ!!」
殺す。

ぼやける視界。
限界の眠さ。
ただの眠さじゃない。

「大丈夫だ、すぐ寝る」
麻賀が笑う。

「刃に、麻酔薬をもっているからな」
麻酔薬───。
「上時、眠いだろ?」
卑怯だ───。
「上時、倒れろ?楽になるぞ」
「………だ、れが、…………」

意識が朦朧としだす。
ぐらつく身体。
歪む視界。
警鐘を、頭の中で───かき鳴らされているようだ。
聴覚も、鈍る。

身体中、血だらけ。
赤が。


ぼやけて歪む視界に、やけに映えて見える。
「………は………ぁっ………」
「終わり、だよなぁ?上時総長」

───誰が。
終わるんだ?


頭の中。
張っていた糸が。
音をたてて切れる。

「───来ぃ………」

もう。

壊してやる。
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