代償
「───あ」

「───上時!?」
「文香ちゃん、ダメだ!!」
何かが変わった、上時。
上時のもとに走りそうになる。
私を、見張りの人がおさえた。
「離して!!」
「ダメだ!!今、奴は───」

青ざめる。

「だって………上時が………」
「だから聞け!!今行ってみろ、死ぬぞ!!」
耳元で叫ぶ。
「あー、完全にゾーンに突っ込んでる」
気楽な声。
ゾーンに突っ込んでる。
何を意味するか。

上時は着物を真っ赤に染め。
自分が斬り刻まれていることに。
何ら抵抗してない。
麻賀族長も………。
笑ってナイフを振ってる。
あり得ない体制から、ナイフをいなす。

───上時じゃない。

「───何で」
喧嘩───決闘。
生───死。
勝───負。

背中合わせの状態。
何を───感じてる?
怖くないの?
痛くないの───!?


「───!?」

「上時───!!!」



下腹部に───ゆっくりと刃先が刺さっていく。
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