代償
「文ちゃん、ケータイ鳴ってるよ」
あ、ほんとだ。
メールだね。

『仕事行って来る。今日は戻らないから適当に出前とって食って寝ろ。

P.S.朝5時、風呂沸かしとけ。起きれればコーヒーよろしく』

「わーお。凄い内容だね。朝5時って」
「総長らしい。全部上から目線」
「コーヒーまでいっちゃう?普通」
上時は普通なんだよ。
これが。
一月経って大体の、上時取説が出来てきた。
「上城は自由だからね。仕事が辛そうだけど」
「酷い時には一月でげっそり痩せこけるよな」
「見てられないよな。痩せこけた総長は。1週間で戻るけどね」
ケラケラと笑う。
…………よく笑うね。
「何で続けるんだろ。辛いだろうにね」
「上城は顔がいいからなぁ。頭もいいが。会社勤めもいいと思うぞ」
「総長がいるマンションの15階に一人いるよな。メガネの」
「ああ、あのイケメン?上城同様、いい顔してるよな」

………誰?
15階って。
………前、チラッと言ってたな。
「で?文ちゃんは総長のこと、どこまで知ってるの?」
上時?
暴走族・前橋組の総長で、借金取立ての残酷な男。
顔がいい、くらい?
「うーん………総長の過去は?」
過去?
成績オール5で首席?
「この前橋組に入ったときのことだよ」
「オレとキャーラは同じ年に入ったんだ。オレらな通いながら、族にいた」
………へぇ。



「総長さぁ、捨てられたんだよ。親に」
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