代償
あれ?
ねえ、上時。
恋人的なって、否定しないの?
してよ。
お願いだから。
もう。

居酒屋の2階に、氷族長の家がある。
いかにも男所帯な。
「ごめんね。散らかってて。氷、散らかし魔だから」
上時と一緒だ。
すぐ散らかして。
3日もすればゴミ屋敷。
酷いよ。
「文香ちゃん。あらためてよろしくね!私、友達いなくて………嬉しいんだ!」
………そっか。
私も嬉しいよ!
お話したいし。
………筆談で。
早く、言葉を話せるよーになりたいな!

「文香ちゃんは、何で前橋組に?上時総長のとこにいるの?」
うーん。
かくかくしかじか。
「私はね。助けて貰ったんだ。氷に」
………助けて貰った?
「色々あったけど、氷はいい人だよ。ポニーテールでちょっと、一般人離れしてるけどね」
上時も一緒だって。
あんな、顔にでかでかと傷がある人なんてそうそういないよ。
一般人離れしてるよ。
………暴走族だし。

「紅茶飲む?」
うん!
頷く。
「ちょっと待っててね~」
はーい。
なんか、お姉ちゃんみたい。
私、一人っ子だったからなぁ。
兄弟とか憧れてた。
「お待ちどーさまッ!」
わあ!
美味しそう!
いい色ー!
「文香ちゃんって、何年生?」
2年だよ。
メール画面を見せる。
「あ、なら私より1学年下なんだ」
3年?
へえ。
「なーんて。学校行ってないけどね」
………そっか。
「その代わり、アルバイト感覚で働いてるんだ。氷北組が一緒だし」
へー。
「前橋組さんたちがたまに来るからおもしろくて」
いいなぁ。
言葉が話せたら、私もアルバイト出来たかな、なんて。

でも、憧れる。
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