代償
~上時side~

「………ぁぁ」
「上時総長?」
「………疲れた」
「仕事は?今日は休み?」
「だな。極度の肉体労働なんでな」
「あー、ホストね」

そうだ。
俺はホストだ。
バカみてぇに人気な店。
そこの、
「トップだもんね。上時総長は」
「ああ」
トップだ。
文香は………まだ知らない。
「毎日、枕?」
「まぁな。客のオーダーだから、仕方ない」
「女嫌いなのに?」
「ああ。手っ取り早く稼げるからな」
「一晩、いくら?」
「多くて、800万以上」
「1年で1財産作れるね。それ」
「まぁな………疲れるだけだ。こんな仕事」
1財産。
確かにな。

辛いだけ。
抱きたくもない女を抱いて。
仕事中はまともに飯も食えない。
吐き気で、吐きまくって。
逆流性食道炎なんかになっちまって。
………ああ。

何で、ホストなんか、やってんだ?
辛いだけなのに。
暴走族の総長、族長なんて。
借金取立てなんかして。

俺の人生、おかしいぞ。
………こんな、狂った人生なんか、望んでない。
もっと、マシな人生を生きたい。
ホストじゃない、族長でも総長でもない。

一般人に、憧れてた。
………なのに。


あいつらは、俺を棄てた。
邪魔だと、そんなわけで。

自分たちだけ………幸せになって。
俺を、不幸のドン底に叩き付けて。

………俺の………何が悪い………?

何が………悪かった………?



俺を………何でこの世に、作り出した?
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