代償
本屋で。
………日本食の本はどれがいいんだろ。
「文香ちゃん、こんなのどう?」
凜音さんが持つ本。
約50種類の日本食のレシピが載ってる。
「上時総長がどんなの好きかは分からないけど、50もあれば結構増えるよ」
確かに。
簡単だし、コストも控えめだし。
これ、いいかも。
「実際、上時総長ってさ、何が好きなの?」
………うーん。
そういうの、特にないんじゃないかな。
何でも食べるし。
味噌と醤油については疎いけど。
「あー、でも上時総長、味覚とか醤油には疎いんじゃないか?潔癖症混じりだしさ」
………潔癖症!?
………へえ。
意外。
「暴走族の総長が潔癖症てね。面白いよね、前橋組って」
うん。
面白い。
前橋組を知り尽くした人なんかいるの?
………あ、マスター?
知り尽くしてそう。
あの上時も尊敬してるっぽいし。

会計を済ませ、店の外には下時組の人たちが、
「………ウザッ」
ユートさんが言う。
下時組の人たちだ。
………何で?
「いつものバカみてぇなガキが用心棒じゃねぇのか?」
「あ?キャーラか?奴は仕事だぞ。サツのな」
「………!?」
ドン引くよね。
暴走族に警察て。
「何だ?この子を取り返しに来たのか?」
「それ以外、何がある。族長が言うんだ。寄越せ」
「上時総長に言われてるンでね」
………あ。
凜音さんは呆れてる。
………あぁ。
また、これか。

「『奴等には指一本、触らせんな』ってな」
ユートさんが不気味に笑った。
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