代償
~上時side~

驚いた。
また、下時組に襲われかけたと聞いて。
何で、こんな頻度で。
メールで知らされて。
ちょうどホストの仕事の合間で。
文香のもとに行こうかと、思った直後、
『城時さん。オーダー、入りましたよ』
城時は、俺のホスト名。
俺の常連客で。
どうしても、外せない。
クソッ………何でこんな時に。
文香と客を天秤にかけるなんて。

あぁ、もう。
ホストである自分が怨めしい。
悪い。
許せな、文香。


一通り、接客が終わって。
メールが来た。
文香からで、

『 』
空メールだ。
何も書けないなんて。
相当、ダメージを受けたんだろう。
………なんてこった。
帰ると返信する。
「悪い帰る!」
「城時!お前トップだろ?!職場放棄する気か!?」
「今日は上がる!ちょうど客も途絶えたしな!」
「城時!自欲のために職場放棄出来るのか!?」
「出来る訳ねぇ!これは前橋組の仕事だ!」
前橋組の仕事。
俺は、総長だ。
文香を護る義務がある。
城時だろうが上時だろうが。
俺は、文香の保護者だ。

仕事場を飛び出し、マンションまで突っ走る。
ベストが邪魔だ。
首に着けた飾りも。
クソッ………何で。

「文香!?」
リビングで不安な色を隠せないでいる。
抱き締めるべきか。
しないべきか。
しないほうが、葛藤で勝つ。
………あぁ、ダメな男だ。
< 76 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop