代償
「城時さんッ!」
控え室で同僚の東(あずま)が言う。
「どうした」
「上がね、ノルマアップするって」
「………ノルマアップ!?」
「そ!」

………はぁ!?
何ここきて開口一番、ノルマアップだぁ!?


「殺す気ですか!?」
上に問いただす。
何がノルマアップだぁ!?
ただでさえ、枕のオンパレードで辛いのに。
「城時、お前なら、出来るだろう?」
「トップがビビってんのか?」

「ビビる訳ない!意味はなんです!?」
クソッ………!
「とりあえず、もう決めたんだ。城時」
近付くな。
汚い。
「いい顔立ちなんだ。しっかり働いて貰うよ」
「………………はい」
ねっとりとした息がかかる。

………汚い!
振り払うように部屋を出る。

「城時さん?」
「………何なんだよ」
「枕、回数増やすんですか?」
「………ああ」
そうしか、ノルマアップの達成は出来ん。
手っ取り早くノルマアップの達成。
枕で稼ぐ。

高額請求のトップなら、なんとかなるだろ。

そんな理由だろう。
………トップだからって。
………俺は、ただの一般人だ。
そんなこと、簡単に出来るか。

「………家に、帰れなくなるな」

………日本食、食いたいな。
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