代償
~上時side~

………過去を知りたい?

………何で。
聞いたんじゃないのか?
マスターやユート、キャーラに。
なのに、何故。
「………聞いたんじゃないのか?ユートやらキャーラに」
「………ぃた」
『聞いた』
………だよな。
「どうして、俺に聞く。同じ事しか聞こえないと思うが」

それで、いいのか?
聞くと、頷いた。
俺は。
どうすればいい。
教えるべきか、教えないべきか。

実際。
言ってしまえば、楽だ。
だが。

後々の後悔が気持ち悪い。
中年のババア抱いた後みたいな。
鼻の奥にねっとりと絡んでいつまでもなくならない、香水の臭い。
吐き気がするほど。

気持ち悪い。
言ってしまってから、気付くんだ。
言う、必要ないって。

「………悪いが、」
文香を見下ろすと、真っ直ぐに俺を見ていた。
その目が怖い。

………女嫌いは。



お前のその目に似た、女から始まったんだよ。
同じ目をして。

俺は。

怖いんだ。
過去が明るみに出るのも。
知られるという、恐怖。
「………」
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