代償
胸の奥が痛い。
過去なんて、捨て去ったのに。
思い出す。
「………バカ」
怪訝そうな顔をする。
………ああ。
………もう。

「俺なんかの過去、聞いたら卒倒するぞ。知らないほうがいい」
納得しない。
するわけ、ないな。

いつも、こうする。
こうして、弱いとこに触れなれないように、弱いとこを庇う。

弱味に漬け込まれるわけには、いかない。
後戻りが出来ないように、されないように。
「………文香」
お前には、まだ話せない。

普通に比べれば。
文香は信用度がある。
が。

怖いんだ。
弱いとこに、踏み込んで来られることが。

………ビビりなんだ。
暴走族の総長して。
こんな姿、見せられない。
「………悪いが、無理だ」
痛くて、仕方ない。

いつもの、表情を保てているだろうか。
情けない、表情になってないか?
………ああ。

「………話せるようになったら、話してやるよ。それまで、待ってくれ」

悪い。
許せな。
文香。
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