代償
「あの人。勇人っていうんだ」
うん。
先輩だよ。
「ユートとは違うよ。ユートは優斗だから」
文字が違うんだ。
「あの人さ、前橋組のブラックリストに載ってるんだ」
………ブラックリスト?
「………んで?」
何で?
勇人さん、いい人だよ?
仲よくして貰ってるのに。

「上時総長に言わなきゃね。ブラックリスト、彷徨いてるってね」
そんな!!
ケータイでメールを打ち出す。
………そんな、上時に言ったら!

「………文ちゃん!?」
「………ゃ、めて」
ケータイを手で覆う。
画面が見えないように。
「何で?」
キャーラの顔が凍てつく。
怖い………!
「僕はさ。文ちゃんを護る義務があるの。権利じゃない、義務だ」
でも、そんな、
「こうでもしないと、前橋組が迷惑な訳。分かる?」
………何で、迷惑なの?
ブラックリストて。

「ブラックリストナンバー46。勇人。下時組の組員だ」
………下時組!?
何で!?
「彷徨いてる理由は、文ちゃんを取り戻すため。文ちゃん、下時組の人だったしね」
………確かに、そうだけど………!
「前橋組にいないと、死ぬよ?総長に言われてるでしょ?」
………聞いた。
………だけど!

「わる、ぃ、人………」
「悪い人じゃないって?悪い人だよ。下時組なんて」

………勇人さんを、そういうの!?
「キャーキャー喚かないで。ま、下時組に戻りたいなら、戻れば?僕は止めないよ」

………何で。
「メール完了。ま、黙って上時総長と同棲していれば苦はしないでしょ」


い や だ。


「後は、当事者同士でどうぞ。僕は止めないからご自由に」

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