後の祭り、祭りのあと
でも、駄目だった。
ずっと続くだろうと思っていた男女の友情も、呆気なかった。
だって、自分の本心に気付いてしまったんだ。隣に並んで一緒に歩くときも、ふざけ合って笑い合うときも。そのすべてに居心地の良さを感じていたのは、あたしが雄大の視線を独り占め出来ているからだって。
いつからだろう。雄大が他の女子と話している姿を見かけると、苦しいというよりも苛立つようになった。
別に雄大はあたしとだけ仲が良いわけではなくて、クラスメートや他のクラスの女子とも分け隔てなく話すような人だった。ただその数多い女子の中で、あたしは親密さを少しだけ増しただけというようなもの。
最初はそれが当たり前だと思ったし、そのことに不満を抱くこともなかった。あたしだって他の男子とも言葉を交わすし、似たようなものだったから。
でも彼があたし以外の女子と言葉を交わすたびに、雄大への苛立ちがすごく大きくなった。
素直でもなければ可愛げもない自分とはかけ離れた女子と、笑顔を浮かべながら交ぜ合わせるその視線を、ただただ嫌だと思った。
雄大が笑うその太陽みたいな輝きが、あたしだけに向けば良い。細まったり丸くなったりするその瞳が、あたしだけを捕らえて離さなければ良い。
そうあれば良いと思ったし、そうであってほしいと願った。
そうやって感じたときに、自ら居心地の良い関係を壊してしまったのだと思う。通じ合っていた友情が、一方的な恋心に変わってしまった。
雄大があたしを友達というカテゴリーでしか見ていないのはわかっていた。だから今ある関係を壊すことが怖かった。
でもあたしは、自分の本心に手を伸ばしてしまった。
雄大の特別になりたい。
その煩わしい感情に気付いてしまったからにはもう、あたしの中で雄大との関係は友達でも何でもない。
居心地は良い。でもそれ以上に苦しさが胸を支配する。そんな、複雑な想い人。
特別な感情が欲しいと思うようになってしまった時点で、すべてが脆く崩れ去ったんだ。ガタガタと、零れ落ちるように。