後の祭り、祭りのあと
……ほんと、馬鹿だよなぁ。
自分の感情の変化を思い出すたびに、何度もそう思う。
こんなにも悩むなら、恋愛感情になんて気付かなければ良かった。
気付いたあたしも馬鹿。そしてその芽生えた想いに気付きもしないこいつも、きっと馬鹿なんだ。
知られてはいけない想い。知られたらその瞬間にこそ、本当にあたし達の関係は壊れてしまう。きっと跡形もないくらいボロボロに、そして後戻りさえ許されない。
でも、本当はずっと気付いて欲しかった。あたしを苦しめるこいつに悩みの種をぶちまけて、同じように悩んでしまえば良いと思った。
だから、手を伸ばそうとした。
……でも、すべては手遅れだったのかもしれない。
フォークダンスはまだ、続いていた。
本来なら輪になって踊っているのだから次のパートナーへと変わっていくのだけれど、ここにいるのはあたしと雄大のふたりだけ。
だから人が入れ替わることもなく、ずっとふたりでステップを踏む。
少し近所迷惑ではないかと思えるぐらいのボリュームで流れる音楽のせいか、さっきまで騒いでいた人達の声はもう聞こえない。いや、みんな踊っているのだから、一応おしゃべりはしていないだけなのかもしれないけれど。
現にあたし達だって、さっきの一言を最後に無言で踊っている。こんな姿を他の人が見たら、きっと楽しくも何とも感じてないだろうって、そう言いそう。
うん、正直楽しくないかもしれない。でも、それでも良いよ。
あたしが雄大の時間を独り占め出来ているのなら、それで。
ふたりきりの空間も、グラウンドも、静かだと感じた。軽やかなメロディーは至って好調に、星が姿を現し始めた空を駆けていくというのに。なんだか無声映画でも見ているみたいな感覚だった。