後の祭り、祭りのあと



 ……あぁ、終わるんだ。
 ふいにそんな思いが頭の中を忙しなく通り過ぎて行った。

 後夜祭も、このふたりきりの時間も。何もかもが終わりに向かって進んでいく。

 パチパチと酸素を求めて、膨れ上がるキャンプファイヤーの炎。積まれていた木材を崩して形を変えて、そして最後には灰と塵しか残さない。

 でも、そんなのまだマシだと思った。
 綺麗さっぱりと、何もかもが無くなるわけじゃない。


 ねぇ、雄大。
 この祭りのあとには、何が残るんだろうね。

 盛り上がるところまで盛り上がりきった熱気は、この後夜祭が終わるとともに冷めていく。
 明日からまたいつもの学校生活が始まるように、祭りのあとに残る余韻なんてたかがしれているんだ。

 だったら、あたし達の間にもきっと何も残らない。

 祭りが終わる。だけどあたしは……何も出来なかった。

 気持ちを告げることさえ叶わなかった。

 だから、祭りのあとにはきっと何も残らないのだろう。

 何も残らない。終わる、消えていく。

 唯一残るとしたら、大きな後悔だけ。

 後悔したってときすでに遅し。

 ――もう、後の祭りなんだ。



「……っ、……」


 昼間に見た嫌な笑顔を思い出した。雄大が女の子に向けた、嬉しそうに照れた顔。

 鮮明に浮かび上がるそれにめまいがする。

 そしてちょうどその瞬間に再びダンスはターンに突入し、半回転をして雄大に背中を向けた途端、あたしの左足は下り階段の段差に滑り落ちた。

 ガクンッと膝が落ちて一気に身体はバランスを失う。

 一瞬の出来事だった。



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