後の祭り、祭りのあと
「じゃあ、何で声かけようとするたびに逃げたんだよ。俺、美紗と文化祭回ろうと思ってたのに……」
雄大の腕に力がこもる。身体だけではなく、あたしの中心部まで抱き締められているみたいだ。
……そんな、期待させるようなこと言わないでよ。
嫌な光景とさっきの雄大の言葉が交互に浮かび上がる。なんだか泣きそうだ。
「……あっ、あたしだって、」
「……」
「あたしだって……一緒に回りたかったよ」
言ってはいけないと警笛を鳴らす思いとは裏腹に、口が本音を漏らしてしまう。
零れ落ちた涙の向こうに、昼間の出来事が浮かんだ。
――好きなの、雄大くんのことが。
その真剣な声を聞いてしまったのは、ちょうど雄大を探しているときだった。
午前中に模擬店の担当が終わり、午後は他の模擬店を回る時間が出来て。同じ時間に休憩に入った雄大を誘おうと思っていた。
……告白しようって、決めてたの。
自分の気持ちを告げることが二人の関係を崩すことは十分承知していたけど、言わずになんかいられなかった。
それぐらい想いはすでに満たされていた。震える手を、伸ばそうとするほどに。
だけど、決意したときにはもう……。
「好きなの。ずっと前から雄大くんのこと。あたしじゃ、ダメかな?」
人気のない体育館裏。人目を盗んで告白するには、定番の場所。
自分でも、どうしてこんなところを通ったのかわからない。
雄大を探しているうちに引かれるように通ったその場所で、あたしは告白現場を目撃してしまった。
しかも相手は、あろうことか雄大で。声の主は、隣のクラスの女の子だった。